4.ライン化の推進 生産ラインの形態
あなたの工場では、素材の投入から製品の出荷まで、川の流れのように淀みなく流れていますか。清々と流れていれば問題点(ムダ)が顕在化し、生産革新は進みますが、もし淀みがあれば問題点は埋没し、競合他社に遅れを取ることになります。生産ラインの形態についてステップを追って考えてみます。
4-1.生産ラインの形態
4-1-1.ステップ1 機種別(機能別)設備配置(多台持ち配置)
〈機種別設備配置・説明〉
- 同一機種の設備が配置されている場合で、設備間相互の部品の流れは少なくその設備だけで大部分の加工が完了することが多い。
- 事例としては、ダイカスト、プレス、インジェクション成型、単軸バーマシン、マシニングセンター等の設備が多数設置され、「多台持ち」となっている。
- ロット生産となり、機械設備はスピードを大切にし、量を造ることを要求される。
- 組立ラインでもこれと類似の形態を取っている場合がある。例えば組立ラインが数本有って、その後の大きな試験機1台で機能チェックをしている場合である。
この場合、組立ラインと試験機間には仕掛りが発生するので小さな試験機を作りライン化することが望ましい。 - この設備配置では仕掛り在庫が増え、保管スペースも取り、リードタイムも長く、不良の発見も遅れ、次工程への運搬ロス等が発生するだけでなく、段替えロス、作業者の手待ちなどのムダが埋没し、改善のニーズが薄れることになる。
- 利点としては、単能工で対応でき、作業に習熟できる。工具類の共用化もできる。
〈この配置の問題点と改善の方向決め〉
- 別のフロアーに後工程の設備が設置されていることが多く、そのため工程間の仕掛りが増え、保管、運搬ロスが発生する。
あるべき姿としては最終工程まで連結し、「多工程持ち配置」とし、ライン化する。もしこれが難しければ一部の工程だけでも連結する。このとき両設備とも徹底的なムダ取りをしてから、連結することが大切です。
こうすることが多台持ちラインの生産性向上の秘訣です。 - 仕掛り品の保管に大きな容器、例えば網パレットが使われているのを見かけるが入れるときにも取出すときにも1回当り数秒の時間がムダとなるので極力小さな容器にする。
多工程持ちにして後工程を直結すれば容器もムダな時間も要らなくなる。 - 多品種少量生産の場合、品種変えにより作業者の繰り返しの作業時間が変わり、手待ちや設備停止が発生することがある。一般的には設備停止を避けるため持ち台数が少な目に設定されているので、各所で手待ちが発生することがある。
この手待ちを少なくするには、作業者の繰り返し作業の標準時間を部品ごとに設定し、適正な持ち台数を与えるようにする。どの設備でも使えるように多能工の育成を絶えず行うことも必要です。
作業者が段替えもしている場合は段替え中、他の設備が停止することもあるし、設備を止めないで行う外段取りも難しいので、専任の段替えマンを置くのがよい。 - 全ての機種別設備配置を、直ちに次工程とつなげるライン化が難しい場合もある。
例えば冷間鍛造プレスと2次加工ラインでは、マシンサイクルが極端に違うし、プレスの振動やボンデ粉の問題もある。
またダイカストラインと2次加工ラインでも、環境の問題等があるが、初めからライン化を前提に工場計画すれば何れもライン化は可能と思う。
4-1-2.ステップ2 直線ライン化(多工程持ち配置)
- 最終工程まで、工程順に設備を並べ(ライン化)、1人または数人で全工程を受け持つ。
- 設備間と設備横幅は極力小さくし、歩行は直線で最短とする。
- 1個流しの流れにし、加工品の取り置きをしない。
(考え方としては、加工完了品は次工程の治具に放り込む) - 作業はタクトタイム、作業手順、標準手持ちを決めた「標準作業」とする。
(これについては次回の講座で説明します) - 直線ラインでは帰りの歩行がムダになるので、U字ライン化する。
- 全工程を1人でも持てるよう、多能工の育成が不可欠である。
- 直線ラインでも、次に述べるU字ラインでも、工程間に仕掛りを持った流し方をすると、取り置きのムダやラインバランス(作業時間の配分)の悪さや段替改善ニーズなどが判らず問題点が埋没してしまうので、1個流しに徹すべきです。
【ライン化(1個流し)の成立条件】
- 欠品がないこと。
- 不良、手直しがないこと。
- 段取替えが素早いこと。
- 設備故障、チョコ停が無いこと。
- 作業時間の配分が良いこと。
- 多工程持ちが出来ること。
これらがクリアされていないと、手待ちが発生し、ライン化しても一時的に生産性がダウンすることがある。
【加工ラインの流れ化の条件】
- 床面から一定の高さをワークが移動すること。
(床面からのワークの取付け高さが同一で、水平に移動すること) - 上から見たとき、ワークの取付け点と取外し点が直線上にあること。
(上から見てワークの移動が直線で、出入りが無いこと) - ワークの工程間の移動ピッチは等間隔が望ましい。
(将来の自動化対応として) - ワークの移動が自工程の取外し点と次工程の取付け点まで連続していること。
(跳ね出されたワークが次工程の取付け位置まで自動的に流れること) - ワークは取外し後、次工程において取付けの姿勢を保ち、取付けを待つこと。
- 作業者のワークの取付け、取外しに要する時間は4秒以下とすること。
(参考: 3秒以下=○ 4秒=△ 5秒以上=×) - 作業者の歩行距離は自工程の取外し点から次工程の取付け点を結んだ最短となること。
- スイッチオンは作業者の自然体で行え、手を伸ばしたり、逆モーションにならないこと。
- ワークの加工、取外し、取付けを自動化した機械は作業者の歩行ゾーンから外に出すこと。
- 最終工程での完成品の1個当たりの時間のバラツキは±10%以内のこと。
【ライン化(1個流し)の効果】
ライン化の効果としては、後述の「ロット生産の問題点」が明確になり、改善のニーズが出ることにありますが、ただ工程順に設備を並べただけのライン化では大幅な生産性の向上は期待できません。ライン化により顕在化したムダを徹底的に取ることが生産革新推進に不可欠なのです。
4-1-3.ステップ3 U字ライン化
- 反時計回りに工程順に設備を並べる。
(特にチャックが左側にある旋盤加工ではチャックを見ながら歩行できるが時計回りにすると逆モーションとなり、動作のムダが発生する。) - 作業者は一方向(内側)配置とし、立ち作業とする。
- ラインの幅は1m(1人)~1.2m(2人以上)とする。
- 入口(素材)と出口(完成品)を同一人が担当する。
- 設備間と設備横幅は極力小さくし、歩行は直線、最短とする。
- 1個流しの流れにし、加工品の取り置きをしない。
(考え方:取外した加工品は次工程の治具に放り込む) - 生産変動に対応し、作業者数を増減する。
(レイアウトの基本はそのラインが、最適人員でもまた一人でも全工程がムダなく回れることが最も重要です) - 端数人工(例えば3.5人→4人、ムダ0.5人)が発生することがある。
4-1-4.ステップ4 大部屋化(ファミリーライン化)
- 複数のラインを1人又は数人で受け持ち、端数人工を吸収する。
例えば、ラインAが1.7人、ラインBが1.6人の場合、別々にラインが在ると4人必要となるがファミリーラインとして2つのラインを集め、改善を入れることで3人に出来る。 - 1人ラインの少人化は数ラインをファミリーライン化することで可能となる。
- この考え方を工場全体に展開し、全社的改善活動により少人化を進める。
【ロット生産の問題点】
後工程に1個ずつ流さないで、まとめてロットで流すのが何故悪いかを考えてみます。1個流しと言うと、タクトタイムの関係で、2個取りや4個取りをしているものまで、1個ずつ加工しなければならないかと言うと、そうではありません。
この場合は2個や4個をひとかたまりの1個と考えて流しても良いのです。
1) 何故ロット生産をするのでしょうか。
- 段取替えに時間が掛かるのでまとめ生産し、段替え回数を減らしたい。
- まとめて次工程へ運搬した方が得だと誤解している。
- 作業に習熟し生産性が上がる(多能工の養成の遅れ)。
- 高価な設備なので能力一杯の仕事がしたい。
- 検査も抜取りでやれば検査時間の削減になる。等々
2) ロット生産の問題点
- 完成品収納スペースが大きくなり、設備間が広くなってムダな動きが増える。
- 収納容器への出し入れのムダが発生する。
- 保管のスペース、在庫管理のムダが発生する。
- 工程間での停滞が発生し、リードタイムが長くなる。
- 工程間の部品運搬のムダがある。
- 不良対策が遅れる。また、まとめて不良品が出る。
- 仕掛在庫が有ると、設備故障、段替え改善のニーズが弱くなる。
- 手待ちが有っても、管理者が見ていると不必要な物まで加工し、作業配分の悪さが判らない。
- 加工、組立での加工洩れ、欠品が発生するおそれがある。
- 同時に多数個を処理すると設備は大型、複雑で高価となる。
(1個流しならシンプルな設備で安価である) - 設備能力を上げることが重視され、人の作業密度の追及が甘くなる。
- 仕掛在庫金額が経営を圧迫する。
まとめ
ロット生産は色々な問題点を潜在化させ、改善が停滞するので可能な限り1個流しのライン化を推進する。
あなたの工場の主用部品の流れはステップ1ですか、それとも4ですか。1個流しのラインになっていますか。見直して下さい。
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