現在計画している自動化投資が採算に合うのか経済計算をしてみる必要があります。設備投資の経済計算に付いては色々な方法がありますが簡単な方法で説明します。
採算に合うかどうか、実行可否の判断基準として「回収期間法」を用い、複数案から最適案を選択するのに「年価法」を用いることで説明します。
回収期間 = 投資額 ÷ 利益額
投資額 = 初期投資額
利益額 = 設備投資によって削減される労務費、副資材費などの年間効果金額
製品寿命や技術革新などの条件を勘案して期間を決める。3年以内としてはどうか。
例、 投資額 = 30万円 効果:直接工作業時間削減 = 20時間/月
直接工労務費 = 1500円/時間、副資材費は変わらずとして、
利益額 = 20時間/月 × 1500円/時間 × 12ヶ月 = 36万円/年
回収期間 = 30 ÷ 36 = 0.83年 = 10ヶ月で回収できるので投資可。
毎年発生する費用を算出し、比較し、その費用が少ない方が有利な案となる。
毎年の費用 = (投資額×資本回収係数)+ ランニングコスト
資本回収係数 = 設備投資資金の借入金利と耐用年数により決まる係数(下表)
ランニングコスト = 投資によって変化する費用で主に労務費/年
【資本回収係数表】
耐用年数 | 金利1% | 2% | 3% | 4% | 5% |
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1年 | 1.0100 | 1.02000 | 1.03000 | 1.04000 | 1.05000 |
2年 | 0.50751 | 0.51505 | 0.52261 | 0.53020 | 0.53780 |
3年 | 0.34002 | 0.34675 | 0.35353 | 0.36035 | 0.36721 |
4年 | 0.25628 | 0.26262 | 0.26903 | 0.27549 | 0.28201 |
5年 | 0.20604 | 0.21216 | 0.21835 | 0.22463 | 0.23097 |
6年 | 0.17255 | 0.17853 | 0.18460 | 0.19076 | 0.19707 |
7年 | 0.14863 | 0.15451 | 0.16051 | 0.16661 | 0.17282 |
8年 | 0.13069 | 0.13651 | 0.14246 | 0.14853 | 0.15472 |
9年 | 0.11674 | 0.12252 | 0.12843 | 0.13449 | 0.14069 |
10年 | 0.10558 | 0.11133 | 0.11723 | 0.12329 | 0.12950 |
CASE | 投資額 | 耐用年数 | 資本回収係数 | 設備の年価 | ランニングコスト | 総費用 | 順位 |
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1 | 1500万円 | 10年 | 0.11133 | 167万円 | 300万円 | 467万円 | 1 |
2 | 1300万円 | 10年 | 0.11133 | 145万円 | 500万円 | 645万円 | 2 |
この例では、CASE1の総費用が467万円でCASE2より少ないので、この案を採用する。
チョコ停とは、普通の故障と異なり、一時的なトラブルのために設備が停止したり、空転したりする状態を言いますが、多工程持ちや多台持ちのラインでは、1回のチョコ停が早く発見されれば短い停止で済みますが、それが遅れた場合は、長時間の停止につながることもあります。
チョコ停の原因 | 対策後の期待効果 |
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① 日常の清掃不備 ② 段取りの不備 ③ 前工程の品質不良 ④ 設備のメンテナンス不備 ⑤ 設備や治工具の設計のまずさ | ① 設備のスピードアップ ② 人員削減 ③ 多台持ちの拡大 ④ 無人運転 ⑤ 不良低減 |
チョコ停の原因 | 対策後の期待効果 | |
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搬送系 | 1.詰まり 2.引っかかり 3.噛み込み 4.ブリッジ 5.部品切れ 6.供給量不足 7.供給量オーバー 8.脱落 9.挿入ミス | 1.材料、部品に起因するもの ① 寸法不良 ② 外観・形状不良 ③ 異品混入 ④ 磁気の有無 2.搬送・供給系に起因するもの ① シュート形状不良 (形状、表面状態、キズ、汚れ繋ぎ部分の平坦度) ② パーツフィーダー関係 (振幅、共振、バランス、最適供給量、取付状態) ③ 姿勢制御関係 (方式、部品との適合性、供給量) |
組立系 | 1.つぶれ、破損 2.2枚取り 3.チャッキングミス 4.タイミング 5.組立不良 6.排出ミス | 1.組立系に起因するもの ① 治具精度 ② 組付け精度 ③ 部品精度 ④ タイミング 2.現場管理に起因するもの ① 段取替えの調整ミス ② セッティングミス |
検出系 | 1.誤動作 | 1.検出系に起因するもの ① 検出システム自体 ② センサーの取付方法、位置 ③ 適正感度条件 ④ 調整不良 ⑤ タイミング ⑥ 使用条件 |
① チョコ停の発生状況を数日間にわたって調査する。
② どの機械のどこの部位で発生しているのか絞り込む。
手間の掛かるチョコ停現象の物理的解析(PM分析)に入る前に、肉眼では判り難いチョコ停のメカニズムをビデオ観測により解決できないか試行する。発生頻度が低い場合は、三脚を使用しカメラを固定して長時間無人撮影する。ビデオは再生の仕方によっては1/30秒の微細送りが出来るので、高価な高速ビデオが無くても発生のメカニズムが判ることがあるので、先ず試行して見て下さい。
「パーツフィーダーから鋼球が定量排出されない」という事例で研究してみますと、
ビデオ分析やPM分析でチョコ停の原因の絞込みを行い、これに基づき対策案を作成し誰が何を何時までにやるかを決め、実行に入る。
チョコ停がどの程度改善されたか確認し、不充分なら再度対策する。