竹内 : |
最近のフォーラムではCAEがどのような状況になってきているのか、製造業のモノづくりでどのようなことができるのか、歴史は長いのに現場で普及しないのはなぜか、なにがブレイクスルーかということをトピックスに、大学の先生や現場の方々にパネルディスカッョンをしていただきました。 私はIBMで、CAD/CAMからはじまりデジタルエンジニアリングのプロセスをビジネスのテーマとして26年間やっています。 コンピューターは昔は高価で、それをどう有効に使ってモノづくりに活かすかというのが技術サイドのテーマでしたけれども、今はずいぶん安くなりました。それを使ってどのようにモノづくりの現場に浸透できる使いやすい道具や環境を作っていくか、という最新の情報をディスカッションできたのではないかと思います。 |
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磯部 : |
私は昭和46年に入社し、その時からずっとCAD開発をやっています。ちょうどCADの歴史が始まった時で、途中潰れたり再立ち上げをしたりして、今は100人以上でやっています。 CAD開発というのは組織も含めてどうやって展開していくのか。結局ユーザーにメリットを出しながら社内で展開していくにはそれなりのノウハウがあれこれ必要です。 私達の世代はゼロからの歴史をずっと追っていて、なにがうまくいって、なにがうまくいかなかったか、ノウハウを蓄積しています。DPRはそういうノウハウや情報を持っている人が集まっているところですから、自分の会社の中で少しでもうまく展開していくためにはどうしたらよいか、情報交換ができると思うのです。 各ベンダーさんがセミナーをやる時は当然スポンサーがいて、発言する人もそのスポンサーを背負っていますが、この会はスポンサーがないので、「本当はどうなの?」というところが聞けるのが一番のメリットだという気がしています。 |
景山 : |
私は社内で経営層への営業、というような立場でここにいると思うのですが、僕達が何に一番苦労してきたかというと、CADが有効なツールだということは皆わかっていてもとても安くはないので社内の中で認めさせなければならない、経営者に認めさせなくてはいけない、自分が変わらないといけないことを設計者に認めさせなければいけない、ということです。そういういう話をDPRですると、すこし、違和感があるんですよね。ちょっと技術的な話を聞きたいな、と思って来ている人にぜんぜんちがう話をするわけですから。 CADをつくってきた苦労も実はすこしだけあるんです。社内のたった数人でCADをつくってきて、それがCATIAに勝てるだろうか、と悩んだときですね。相手は2000人にもなった会社なのでもう勝てない、と。それで、僕は「どうやってこの道具が会社に利益をもたらしたか?」というのを考えていくことにしました。 あと、ITツールを使うときに経営者の目標設定が生ぬるいように感じます。言葉では「改革のツールだ」って言っているけれども、実際は改善ツールみたいなんです。ですから、もっと厳しい命題、制約条件を与えたら、ITの可能性がもっと現実として活きてくるなと考えています。ここにいらっしゃる方々はそこをブレークスルーされた方々ばかりで、本当に役に立つ情報源ですね。 |
渡辺 : |
私は、ソニーグループ内の情報システム全般を担当しているソニーグローバルソリューションズにいます。25年ほど前にソニーに入った時は機構系の設計者で、8ミリビデオ開発のテープ走行系の構造開発・設計に携わっていました。「どうやってこれを設計するの?」というのに興味があって、設計するためのツールや、それを解析するためのシステムを自分で開発し、それをCADに連携させて、ということをやっていました。 以前、「デジタルと企業の競争力」というテーマのときに話題になったのは、デジタルで一気通貫の実現、と言うが、それはひじょうに大きな意味を持つと同時に、実際は、そう簡単なことではない、ということです。 まずは、データそのものの変換、連携の問題があります。各種の業界標準の中間フォーマット経由やダイレクトトランスレーターなど、最近は、ずいぶんとその変換品質も向上し、実用的になってきています。ただし、単純に形状データによる連携というのは、モデル構築のノウハウや設計そのものの考え方等々はぜんぜん伝わってないのです。 さらに難しいのは、プロセスの改革を伴う一気通貫の実現ですね。これまでの歴史の中で最適化されてきた分業化のポイントが切り替えられることになります。ひじょうに大きな労力が必要です。同じ会社の中であっても、たとえば、デザイン部門と設計部門とのデジタル化による一気通貫、連携が、容易には実現できないことでわかると思います。 また、設計のやり方、というか、CAD技術の発展と連動して、設計そのものをどのようなレイヤーで行うのか、ということも話題になりました。私が気になっているのも、この部分であり、デジタル化によって、所謂、設計のレイヤーが変化していくわけです。この種の変化は、コンピューターの世界では顕著でわかりやすいです。機械語からアセンブラー、そして、C、C++等々の高級言語によるソフト設計と変革が起こってきました。 これからは、UML等、図表による設計図の世界です。メカ設計にしても、昔は、二次元のCADで、単なる線や丸とかの一個一個の形状要素の集合体として全体形状を定義していました。それが、3次元CADになって、フィーチャーの集合体として、ボリュームとして、形状そのものを扱えるようになった、それが、今後は、構造物としての機能要素単位の集合体による設計というものに変化していく可能性が高い。そうなってくると、システム設計的な概念を持ち込むことができるようになり、メカだけではなくて、メカ、電気、ソフト等々の異なる設計領域が連携したトレードオフ設計というかバーチャル試作的な環境構築にも展開していきます。 これがデジタル化による一気通貫の究極ではないでしょうか。こういうことを議論できるのがDPRの場であり、直接的な解決に至らなくても、さまざまな業界の人達と問題意識や課題意識を共有化したりできる意味のある場だと思います。 |
Page3へ続く
株式会社
日本デザインエンジニアリング
代表取締役 |
東京大学
大学院工学系研究科
精密機械工学専攻
教授 工学博士 |
デジタルプロセス研究会
専務理事 |
有限会社
アイ・シー・アイデザイン研究所
代表取締役 |
株式会社
アルモニコス
代表取締役 |
シャープ
株式会社
生産技術開発推進本部
設計システム開発センター
設計プロセス開発室
室長 |
スズキ
株式会社
デジタルエンジニアリング部
第四グループ
専任職 |
ソニーグローバルソリューションズ
株式会社
設計技術ソリューション部門
部門長 |
日本アイ・ビー・エム
株式会社
理事 |
日本アイビーエム インダストリアル ソリューション
株式会社
社長室 顧問 |
株式会社
ファソテック
第1事業部
中部担当部長 |