特集:「JIMTOF2022」
オンライン開催を経て、4年ぶりにリアルで開催されるJIMTOF2022日本国際工作機械見本市。展示規模は過去最大、世界中の出展者・来場者共々、期待に胸を膨らませている頃ではないだろうか。あの熱気と活気が、東京ビッグサイトに戻ってくる。
会長の稲葉善治氏に、2022年開催について聞いた。
稲葉氏は、展示会の魅力の前にまず「日本の工作機械の現状は大きく二つに分かれる」と言う。一つは、世界的に工作機械の需要が高まっていることだ。2022年の受注額は、日本工作機械工業会が年初に見通した1兆6500億円を上回るペースで推移しており、同工業会は9月27日に1兆7500億円に上方修正した。一方、生産資材のひっ迫により生産量が増えないという課題にも直面している。これまでは、いかに安い部品を仕入れ、手持ちの在庫を減らすことができるかが重要だった。しかし、新型コロナウイルスの流行によって、シングルソースに頼るのではなく、複数のサプライチェーンを充実させることの重要性も増した。また、ロックダウンなど物流の滞りに備え、重要部品の在庫を整えることも必要になる。このように、いかにレジリエンス(サプライチェーンの強靭化)を整えるかが今後の鍵となるだろう。
二つ目は、市場における要求の変化である。カーボンニュートラルを目指す現代では、二酸化炭素の排出量をいかに削減できるかに注目が集まっている。日本工作機械工業会では、開発から製造、使用、廃棄に至るまで、トータル的に温暖化ガス排出量の削減への対応を強化していく。各企業からどんな提案が出てくるのか期待が高まる。
今回の展示会では、『デジタル』『グリーン』が大きなテーマになるだろう。稲葉氏は「一度原点に戻り、工作機械は何をもたらすのか。今回の展示会を通して、日本の工作機械の魅力や、機能の豊富さ、いかに世の中へ貢献しているのかをお伝えしたい」と力を込めた。
J I M T O Fでは毎回、多くの出展者が「初披露」の技術・製品を出展する。今年は4年ぶりのリアル開催ということもあり、各社の新機種・機能に期待が高まる。開催期間中には、大学研究室によるポスターセッションや、プライムアースEVエナジー株式会社代表取締役社長の岡田政道氏による基調講演『カーボンニュートラル時代の可能性を拓くものづくり』、工作機械トップセミナーなどを併催する。他にも、企画展示『最先端のものづくりのとミライ~工作機械とSmart Factory~』など、現在業界内でニーズが高い分野(自動化、工程短縮、環境対応、知能化によるユーザー支援など)に関する展示もある。このように、コロナ禍を経た会場では幅広いコンテンツが目白押しだ。スマートファクトリ―の実現には何が必要か、周辺機器をどう組み合わせるか、など堅実な対応が求められる時代だ。
戦後、天然資源に乏しい日本は奇跡の復活を遂げた。それは先人たちの努力を、製造業が支えたといっても過言ではない。しかし現状は国際的地位が低下し、GDPや所得、学力など世界と差をつけられてしまった。加えて、少子高齢化により人材確保も困難になっていくだろう。強い横並び意識や、女性に対する労働機会の少なさ、定年を迎える従業員の豊富な知識を活用しきれていない事など、日本が抱える問題は多い。
この先、モノとコトは互いに発展し、高度に融合していくことが重要だ。言い換えれば、コトはモノがなければ起きない。コトを支えるのはモノ、と捉えることもできる。「世界最高レベルの質と量を備えた“モノ”が、日本にある。製造業が復活しなくては、日本の底上げはかなわない」と、稲葉会長は言う。マザーマシンはものづくりの基盤を作る。製造業全体で、日本の復活に尽力していく。工作機械業界が世界をリードするJIMTOFから目が離せない。
掲載企業
総合工作機械メーカーの今後の展望
・DMG 森精機株式会社
・安田工業株式会社
・芝浦機械株式会社
・ファナック株式会社
・株式会社牧野フライス製作所
研削・研磨 超微細・精密加工への挑戦
・株式会社岡本工作機械製作所
・株式会社ナガセインテグレックス
省スペース・精密加工への挑戦
日本製ツールの強み <対談>
設計ツール(CAD/CAM)、生産管理ソフトの展望