特集:JIMTOF2022
静岡県焼津市にある敷地内には、南国の植物が茂り、スタジオと名付けられた工場建屋の前には、黒塗りされた歴代工作機械のオブジェが配置されている。まるで海外にいるような、一風変わった景観だ。
1903年に創業した碌々産業株式会社は、東京に本社を置く微細加工機メーカーである。以降、1996年に高精度高速小径微細加工機『MEGA』を市場投入。2010年には『MEGA』の上位機種として超高精度高速微細加工機『Android』を発表。今では5機種を要し時計部品、スマホ、半導体などニッチな市場で活躍。最適な微細加工機、工具、CAD/CAM、加工環境の“四位一体”を掲げ、微細加工分野を追求する。
そんな同社を率いる海藤氏は、今年のJIMTOF出展に向けて「『R-Design』というコンセプトのもと、“人間拡張”の考えを普及させたい」と語る。新たに提唱した『R-design』は、技術者の追求心を絶やさず伸ばすことを目指している。“加工技術者の感性に響くマシン造り”をテーマに、微細加工機のあるべき姿を研究する。たとえば、微細加工向けの追い込み加工システム『COSMOS』では、すべてを自動化せず、補正データ入力は加工技術者が担当するなど、人の経験や予測で調整できる余白を残している。オペレータの意思を忠実に反映させる操作性や、オリジナルソフトウェアの開発、アーモンドアイスリットと呼ばれる外観のデザインにもこだわり、究極の実加工精度を実現させるねらいだ。『R-design』の“R”は、碌々産業、そしてResound(響く・共鳴する)の頭文字から取っている。
また数年前から始まった『e x p e r tMachining Artist(エキスパート・マシニングアーティスト)』の認定も続いている。これは、超精密加工や高品位加工を深く探求し、かつ繊細な感性を持つ加工技術者へ贈る呼称である。現在その数は110名にのぼる。
今、製造業界はものづくりの全自動化を推進するスマートファクトリー化を目指す風潮にある。これに対し海藤氏は「人間を排する自動化は、生産性が飛躍的に向上する分、加工技術のイノベーションが起こりにくくなる」と危惧する。これまでの製造業界では、QCDを掲げ、安価な大量生産品を提供してきた。しかし、設計・生産受託を行うEMS企業の登場により、従来の経営方法では大手EMS企業に職を追われ、業界全体は衰退する可能性がある。そこで重要となるのが、QCDを追求したスマートファクトリー化と、人の感性と機械技術が共鳴して起こる“人間拡張”すなわち加工技術のイノベーションの双方が両立できる生産システムを構築し、高付加価値経営に移行し、差別化を図っていく。
碌々産業株式会社では『MachiningArtist』に続き、『R-design』を推し進めた環境づくりを通し、日本の製造業の新たな方向性を示している。人をつくることで、私達の未来をつくっているのだ。
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