( 初出:日刊工業新聞社「プレス技術」 第39巻 第12号 (2001年12月号) )
執筆者 内原康雄
日本でもっとも町工場の集積する東京・大田区。しかし、最近では大田区の町工場も様変わりしつつある。巧電社はそんな変化していく町工場の典型的な例である。マシニングセンター4台、3次元CAD/CAMを利用し、コピー、FAX、OA機器、メーター、スイッチング機器などの試作品を主として手がけている。
社長の宮丸巧氏が20年前に汎用彫刻機を一台入れてスタート。10年前にはマシニングセンター導入した。現在、同社の営業兼加工業務を担当しているのは2代目の宮丸勝也氏である。
勝也氏は大学を卒業後、バンクーバーで2年、セールス&マーケティングの勉強した後、精密測定機の輸入商社に入社。その後、義父の経営する巧電社に入社した。
ガンダム、戦車、戦艦などのプラモデルが趣味であった勝也氏は現在の仕事を天職である、という。自分で作った製品を手にしながら「いやあ、プラモデルを自分で作っているようなので、毎日が楽しい」と語る。
製品の一例 巧電社では「精密に特化していく」ことが生き残りの戦略だと考えている。0.2mmのエンドミルを使った製品を見ると切削で作った製品か? と見間違うほど精巧な切削技術を持っている。
現在、勝也氏を含めて現場スタッフは3名。宮丸氏も自ら3次元データを作成し、マシニングセンターも操るほか、営業にも出かける。
巧電社の製造工程であるが、ΦSTATIONを中心とした3次元CAD/CAMによりNCデータの作成が行われる。
図面の3次元化ですけど、実際のところはどうなんですか? お客さんは3次元で書いてくれるのですかとお伺いすると、「いやぁ、まだまだ紙の図面も多いです。その方が速かったりするんですよ」とのことである。
3次元がいいか? どうか? という議論があるが、町工場クラスで3次元の図面が浸透するのは、まだまだ先のようである。
同社の製造工程であるが、客先から来た図面を受け取る場合、IGES、DXFなどのデータに対応する。さらにデータ互換がない場合、3DShare- J(電通国際情報サービス&エヌシーネットワーク)を利用してデータ変換を行い、自社で所有するCADデータに変換するという。そして、マシニングセンターで加工を行い、仕上げ工程、検査を行う。
同社で作り上げられた製品群は、細密なものがほとんどである。平均年齢30歳弱のスタッフが作り上げる製品は、職人の域にあるといってもいいだろう。
最近では自社製品に取り組む姿勢をみせており、ルアー関係の試作品を手がけている。今後はより一層精密に特化し、また自社製品にも取り組んでいきたい、と宮丸氏は語る。
CAD/CAM、LAN、ホームページ、電子メールなどITを駆使して、同社は新たなる展開を打ち出している。産業集積地、大田区の町工場の21世紀へ向けてのスタイルを垣間見た気がする。今後も巧電社の新たなる発展を期待したい。
株式会社 巧電社 | |
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代表者 | 代表取締役 宮丸 巧 |
創業 | 1972(昭和47)年2月 |
資本金 | 1,000万円 |
所在地 | 〒145-0064 東京都大田区上池台3-44-8 TEL(03)3727-5612 FAX(03)3728-6271 URL:http://www.koden-sha.co.jp E-mail:info@kodensha.co.jp |
従業員 | 35名 |
営業品目 | 金型・同部品・付属品の製造 |