第5回 光栄彫刻工業(株)

( 初出:日刊工業新聞社「プレス技術」第36巻 第8号(1998年7月号))

執筆者 内原康雄

取締役社長 古賀良幸氏

金属プレス金型部品、モールド金型のコア部品を中心に3次元CAD/CAMを駆使した製作を展開する光栄彫刻工業を紹介する。
光栄彫刻工業の歴史は名前のとおり、刻印製作及び文字彫刻から始まった。その中で、金型の彫刻部品を製作すると同時に金型のコア部品を作るようになって現在のように金型部品メーカーとなった。「現在では刻印製作の売上比率は2割程度、多数の金型メーカー、プレスメーカー、樹脂加工メーカーに精密金型部品を納めています」と語るのは古賀良幸社長である。
NC化の歴史は古く昭和46年にはアジエの放電加工機を導入している。
現社長、古賀良幸氏もスイス・アジエ本社での勤務経験を持っている。その経験を活かしたシステムを構築しているのが光栄彫刻工業の最大の強みである。
本稿ではCAD/CAMシステムを中心に古賀社長の構想を紹介する。

1.「CAMAND」を中心とした3次元CAD/CAMシステム

光栄彫刻工業のネットワークシステム構成は図1のとおりである。

それぞれのコンピューターはWindowsNTをOSに採用している。パソコンはほとんどが自作である。

「当初、UNIXを採用していましたが、UNIXは費用があまりにもかさむので現在はすべてWindowsNTに移行しました。CPUはペンティアム300くらいのモノ、HDは2G以上とか、自作だとソフトウェアに合ったマシンの設計ができます」

古賀社長自ら、製作したマシンの数々は圧巻である。
3次元CAD「CAMAND」を導入したのは平成3年である。現在では「CAMAND」6台のネットワークとなっている。「CAMAND」の特徴は、 IGESデータ受け側としての強さと、個々の機能を自由に組み合わせられる柔軟性である。ちなみに同社では、「CAMAND」の操作の教育や活用法のコンサルティング、さらに受託カスタマイズも行っている。これはこれまでの同社の経験を活かして外部に提供してこうという構想である。

2. 金型ソフトウェアリサーチセンター構想

古賀社長、考案中の構想のひとつに「金型ソフトウェアリサーチセンター構想」がある。これは光栄彫刻工業で培ったノウハウを他の部品メーカーと協力し、さらにソフトメーカーとの協調を踏んで設立する構想である。
現況で我々製造部品メーカーは本来、必要なCAD/CAMではなく、たまたま導入していまったCAD/CAMをなんとか利用しているケースが多い。今後、我々製造メーカーは、自社の金型設計、製作にあったCAD/CAMまたはソフトウェアを導入すべきである。
古賀社長はCAD/CAM利用について次のように語る。

「金型製作において、いくつかのキーワードのひとつにソフトウェアの効率利用があげられます。これは従来の金型製造の中での知識、経験によるものではないものです。金型製作の上でNC工作機械の利用は必須のものとなっています。金型製作をコスト面で考えるとNC工作機械の稼働率が金型製造メーカーの命運を分けます。NC工作機械を動かすことが我々の課題だとしたら、NCを作るためのCAMの利用に力を注がねばなりません」

さらに金型ソフトウェアリサーチセンター構想について古賀社長は

「製造の上で必要なFA化の中にはCAD/CAMだけでなく発注管理、受注管理、給与計算、工程管理etcの合理化があげられます。当社でも受注管理から CAD/CAMへの流れはアクセスで管理しています。そういった先進的情報やカスタマイズサービスを今後は他社に提供することで、同業者の技術一般化が計られ、我々部品製造メーカーの地位確立に繋げようというのが、金型ソフトウェアリサーチセンター構想です」

古賀社長の構想はまさに部品製造メーカーのFA化にあった展開であろう。

3. 光栄彫刻工業のインターネットの利用

光栄彫刻工業のホームページでは、製品の紹介や上記コンサルティングの内容について詳しく掲載されている。インターネット利用でなにか、変わったことはという質問に対して古賀社長は「求人ページが最も効果的です。当社ではパソコン利用が前提条件の製作法をとってます。インターネットで応募してくるかたは当然、パソコンには精通しています。うちの採用条件があえば、人材が入るわけです」
またCAD/CAMデータの利用について「当社では3次元CAD/CAMのデータ利用が製作上のポイントとなってます。得意先の描いたデータをどう加工するか、インターネットを利用することで、リアルタイムに得意先と打合せできるので大変便利です」と古賀社長。
光栄彫刻工業のホームページを見ると古賀社長の先進的な姿勢が伺える(WEBページより)

まとめ

光栄彫刻工業のCAD/CAM関連サービスは、あくまでも現場の加工経験がベースになっている。同社では売上げベースで、3次元CAD/CAMを利用した加工が全体の7割にも及ぶという。設計から製作、そしてネットワークにコンピューターを活用している光栄彫刻工業の今後の課題はネットワーク造りと言えそうである。

Yoshiyuki Tagosaku Koga <tagosaku@koei.dp.u-netsurf.ne.jp>
Chief Executive Officer KOEI I.E. Co.,Ltd.
http://www.koei-i-e.co.jp/
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TEL 03 3946 1355 FAX 03 3947 9912
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光栄彫刻工業(株) 代表取締役 古賀良幸

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