(初出:日刊工業新聞社「プレス技術」 第38巻 第6号 (2000年6月号))
執筆者 内原康雄
インターネットの普及により、ソフトウエアが自由に公開される時代がもう目前に迫りつつある。そこで、今回はプレス用のアプリケーションをネット上で配布する平本金型を紹介する。
「平本金型」は、東京の西部に位置する八王子市で主として自動車部品のプレス金型を製作している。3次元形状の絞り金型を中心に、単発7、順送3の割合で、主に自動車のセットプレスメーカーに金型を納入している。
プレストン数としては45t~600tくらいまで、プレートサイズ1500までを得意とする。
「平本金型」の設計・製作を統率するのは、平本信夫専務である。社員数は6名で、その内訳は設計2名、製作4名の陣容である。
ネットワークは、右図のように組まれている。CAD/CAM関係は、PG-GEOMETORYから始まり、現在、2次元はCAMCORE-HANDY(アンドール)、3次元はΦステーション(CIMATRON)を中心としたシステムで構成されている。
工作機械は、牧野フライスのマシニングセンター2台とファナックのワイヤーカット2台をメインとしている。
システム構成を見てもわかるとおり、CAD/CAMと工作機械はネットワークで結ばれており、迅速な納期に対応できるようになっている。社内ネットワークの構築について平本専務に聞いてみた。「金型価格がどんどん下がっている金型業界に対応していくには、業務の効率化を推進するしかありません。CAD/CAMの部分での効率化、高速工作機械の導入などやるべきことは多いです」
「平本金型」ではここ3~4年、毎年新しい工作機械を導入している。また、CAD/CAMソフトメーカーへの要望として、「インターネットを通じて情報をオープンにしてもらいたいですね」と語る。
CAD/CAMの選定基準としては、
(1) 客先との互換性(CATIA、IGES)
(2) カッターパスの豊富さ
などをあげている。
近年のソリッドブームについて、平本専務は、「どのCAD/CAMメーカーも単純にソリッドモデラーを薦めます。しかし、当社のようなプレス金型を専業に作っている会社では、パネルのスプリングバック量を簡単に編集できるサーフェイスモデラーの方が圧倒的に使いやすい。また、ソリッドモデラーはフィレットなどモデリング機能では、優位だと思います。理想はユーザーにサーフェイスやソリッドを意識させないで利用できるCADが一番ではないでしょうか」
平本専務は、金型設計歴20年と同時にパソコン歴もそれに匹敵している。パソコン草創期には、2400bpsのモデムでネットを始め、MOZAIC(ネットスケープ以前の有名なブラウザソフト)を利用していたと言う。ホームページもhtmlで書き、i-mode対応ページも始めている。
パソコンはどんなきっかけで始めたのですか?と尋ねると、「もともと、新しいものが好きで、パソコンもメカ好きの延長で好きになったようなものです。ツールとしてこれだけ使えるものはないですよね」と説明した。
「初めの頃はMS-DOSで、インターネットもブラウザソフト、通信ソフトなどバラバラに買わないといけませんでした。それが最近ではずいぶん楽になりました」
「平本金型」のホームページでは、会社案内や製品紹介のほかに、DNC高速加工事例、フリーソフトのダウンロードコーナーなどがある。
フリーソフトは、「PD-Tools」という名前で誰でも無料で使える鋼材重量、工具切削条件、プレス打ち抜き力、クランク曲げ展開、コ字曲げ展開、L字曲げ展開、ガイドポスト寸法割出などの機能がある。
「最近ではデータの送受信はほとんどインターネットになりました。インターネットに変わってからほんとうに楽になりましたね」
受注図面について、平本専務は「顧客の発注の中での図面形態は2次元5割、ワイヤーフレーム2割、サーフェス3割程度ですね」と答えてくれた。
CAD/CAMだけでなく工作機械やネットワークをツールとして活用し、モノづくりをしていくか?という視点で取り組んでいるという印象を「平本金型」から受けた。モノづくりにおいては、ソフトウエアはツールである。ツールを導入したら、どう使いきるか?その視点でモノづくりをしているかぎり「平本金型」の未来は明るい。
有限会社 平本金型製作所 | |
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代表者 | 代表取締役 平本 喜文 |
創立 | 1967年10月1日 |
所在地 | 〒192-0041 東京都八王子市中野上町1-13-8 TEL(0426)22-4100 FAX(0426)26-0928 URL:http://www.hiramoto.jp |
従業員 | 6名 |
主要作成金型 | トラック関連部品、乗用車関連部品、ラジエータ関連部品、鋳造品成形金型、モーター関連部品 |
業務案内 | タンデム型(最大約600t、プログレッシブ型(最大約250t)、鋳造部品の成形バリ取型、3次元形状NC彫り込み加工、倣いフライス加工、ワイヤー放電加工、検査用治工具作成、3DNCデータ作成、金型部品作成 |