( 初出:日刊工業新聞社「プレス技術」 第37巻 第7号 (1999年7月号) )
執筆者 内原康雄
昭和精工株式会社は横浜の南部に位置する工業団地の中にあり、すぐそばには八景島を控え、「金沢シーサイドライン」(新都市交通)産業振興センター駅前に位置する。
高精度な加工に常に挑戦する姿勢は、その工場設備に反映され、恒温室の中で製作される金型群はユーザーから高い評価を受けている。恒温室の中は常に21度、湿度55%を保っている。
その環境の中で作り出される製品群は、製罐用プレス金型3割、自動車用金型3割、情報通信機関連3割、その他専用機、自動車関連を開発している。新技術開発に常に取り組んでいる金型メーカーとして、注目を集めている。
株式会社 菱輝金型 | ||
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代表者 | 取締役社長 木田 正成 | |
所在地 | 本社・工場 横浜市金沢区福浦1-4-2 TEL 045-785-1111(代表) | |
主要製品 | 金型製品(精密順送型、ファインブランキング型、エンジニアリングプラスチック型、粉末治金成形型)、フォーミングツール製品など | |
設計設備 | 旋盤(含NC)/マシニングセンタ/治具フライス/平面研削盤/円筒研削盤/内径研削盤/NC光学投影研削盤/NC放電加工機/ワイヤカット放電加工機/CNC治具研削盤/真空熱処理炉 | |
検査設備 | 測長器/デジタル顕微鏡/工具顕微鏡/真円度測定器/投影機/三次元測定器/金属顕微鏡/アラサ測定器/ステップマスターゲージ/コントレーサ/大型石定盤 | |
トライ用設備 | プレス/油圧プレス/ファインプランキングプレス | |
生産管理システム | MOCAR/モデル2 |
昭和精工の開発の歴史を辿ると、10年サイクルで開発が行われいる。その歴史は超硬引抜ダイスの製造から始まった。その後、冷間鍛造金型(昭和38年)、ファインブランキング金型(昭和45年)、順送金型(昭和48年)、トランスファー金型(昭和50年)、複合金型(昭和56年)と日本プレス金型産業のリーディングメーカーとして、常に開発を行ってきた。
近年では、ピット・リベット成形機開発、医療用針キャップ開発、マイクロ複製技術開発、フィルムシート積層ライン開発等に取り組み成果を上げている。
歴史の生き字引である横山生産部長は
「弊社の歴史は常に新技術開発とともにあります。ユーザーの要望に沿った製品を作るよう常に心がけてきました。特に製罐用金型の開発においてはユーザー様から高い評価をうけています」と語る。
さらに、「弊社もバブルの影響はずいぶん受けました。そこから量産加工も手がけるようになり、現在、フィルムシートの加工は設備だけでなく、量産の加工も請負っています。今後も金型メーカーというのではなく開発メーカーという位置付けで前向きに前進していきます」
一方、NC化の歴史も古く、昭和33年には放電加工機を導入している。昭和50年にはワイヤーカット放電加工機、マシニングセンター等のNC工作機械を揃えた。現在は表1(会社概要)のとおりである。
昭和精工のネットワークシステム構成は図1のとおりである。
金型設計から始まり、NC工作機械現場、管理事務所と全体にまたがるネットワークは圧巻である。すべてのPCにはIPアドレスを振りわけている。今後、ますます発展する通信時代にいち早く対応している。
コンピューターはシリコングラフィックス社製、NEC98シリーズ、富士通、東芝など様々なPC機が並び、UNIX、Window、MS-DOSが並列するOS環境になっている。ネットワークソフトはLANTASICを採用している。ネットワークシステムについて金型システム部のリーダー太田部長は「弊社では様々なハードウェア、ソフトウェア、OSが混在しています。本当は一つのシステムに統合したいのですが、ソフトウェアの操作性を優先して現在の形になっています。LANを組むにもWindowsだけならすごくやりやすいのですが…」と語る。
DNCも完成域に達している。各階の工作機械にはDNC用のPC機が設置され、データが振り分けられている。作業者は<<加工手順書>>により加工依頼を受け、工作機械の段取りを行う。工程管理はバーコードで管理され、部品の工程がどこまで製造されているかがわかるようになっている。
CAD/CAMソフトは2次元および3次元で使い分けをしている。
2次元CADは「M-Dragh」(ムトー工業)を採用。3次元CAD/CAMとして「GRADE/CUBEⅡ」(日立造船情報システムズ)。また、ワイヤーカット用の2次元CAD/CAMにはMS20(三菱電機)を利用している。
CAD/CAMの利用法について、太田部長は「M-Draghはマクロ機能を利用して社内の標準アイテムを持っていますが、ドラフター代わりに利用しているのが現状です。3次元CAD/CAMはようやく、本格的に利用できるようになったところです」と語る。
また、データ互換については「データによる通信も始まったところで、IGESデータを客先からもらい、社内でDXFに変換し、各CADにデータを渡すことも出来ました。今後はいろいろなCADからのデータ通信は増えると思います」
社内での図面管理は、工作用、管理用、組込用の3点が出図され、工作用は製作後、破棄、それ以外はCD-Rおよび出図図面として保管される
今後の課題として太田部長は
「CAD設計工数を半減するためにこの6月より5人でのプロジェクトチームを組織しました。昨今の金型業界の現状で、高品質、低コストは当たり前、納期もかなり早まってます。従来は設計の領域は早くても間違えがないように慎重に書くのがあたりまえでしたが、ここまで短納期化がすすむとそうも言ってられません。
また、CAD/CAMデータの利用についても客先と始まったところです。得意先の描いたデータをどう加工するかも含めて情報のデジタル化には対応していきたいと考えてます」
CAD/CAM、工程管理、事務管理等、幅広くネットワークに対応している昭和精工の今後の課題はグローバルな意味での製造ネットワーク造りと言えそうである。