中小企業では、決算ごとの損益の変動が大きいことが散見されます。税務において、過去の赤字(欠損金)に関して、企業側に有利な制度が整備されています。
(ア) 概要
事業年度に生じた欠損金について、翌年度以降7年間にわたり所得金額から繰越控除することができる制度です。
(イ) 対象者
青色申告書を提出する中小企業
(ウ) 措置の内容
事業年度に欠損が生じた場合、翌年度から7年間は所得金額からその欠損金を損金算入する形で順次繰り越して控除できる制度です。
(エ) 具体的事例
2010年3月期 所得△100百万円
2011年3月期 所得50百万円
2012年3月期 所得70百万円
<納税額の計算>
2010年3月期
所得金額がマイナスであるため、納税額ゼロ
2011年3月期
△100百万円+50百万円=△50百万円
欠損金残額が所得金額を上回っているため、納税額ゼロ
2012年3月期
△50百万円+70百万円=20百万円
所得金額を20百万円として納税額を計算
(オ) 適用要件
① 欠損の生じた事業年度において青色申告書を提出
② その後連続して確定申告書を提出
(カ) 具体的な手続
確定申告書等に必要事項を記載し、税務署に申告して下さい。
(ア) 概要
資本金1億円以下の中小企業は、欠損金の1年間の繰戻還付を受けることができる制度です。
(イ) 対象者
青色申告書を提出する資本金1億円以下の中小企業
(ウ) 措置の内容
事業年度に欠損が生じた場合、当事業年度の欠損金額を前事業年度の所得金額で除した値に、前事業年度の法人税額を乗じて得た金額の還付を受けることができます。。
(エ) 具体的事例
2010年3月期 所得100百万円
2011年3月期 所得△70百万円
法人税率30%
<納税額の計算>
2010年3月期
所得100百万円×法人税率30%=30百万円
2011年3月期
所得金額がマイナスのため、納税額はゼロ。
加えて、繰戻還付の請求を実施。
前期納税額30百万円×(当期欠損金額70百万円/前期所得金額100百万円)
=21百万円(繰戻還付金額)
(オ) 適用要件
① 還付の対象となる事業年度から欠損の生じた事業年度まで連続して青色申告書を提出
② 欠損の生じた事業年度において、期限内に確定申告書を提出すると同時に還付請求を実施
(カ) 具体的な手続
還付を受けようとする法人税の額、その計算の基礎その他の必要事項を記載した還付請求書を税務署に提出して下さい。
国税庁、国税局または税務署の税務相談窓口
中小企業庁 財務課 電話:03-3501-5803