第7回の信用保証制度でご説明したとおり、中小企業は、金融機関から融資を受ける際、事業に必要となる資金が十分に調達できない等、様々な障害があります。このような状況を踏まえ、信用保証制度だけでなく、中小企業への直接金融の手法として社債(私募債)を発行し、中小企業の資金調達を支援する取り組みがあります。
(ア) 純資産が5,000万円以上3億円未満の中小企業
自己資本比率20%以上又は純資産倍率2倍以上
かつ
使用総資本事業利益率10%以上又はインタレスト・カバレッジ・レーシオ2.0倍以上
<用語の説明>
① 自己資本比率=自己資本÷総資産
② 自己資本
貸借対照表上の純資産から新株予約権を控除した金額
③ 総資産
貸借対照表の資産合計(負債純資産合計)
④ 純資産倍率=純資産÷資本金
⑤ 使用総資本事業利益率=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷総資産
⑥ インタレスト・カバレッジ・レーシオ
=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷(支払利息+割引料)
(イ) 純資産が3億円以上5億円未満の中小企業
自己資本比率20%以上又は純資産倍率1.5倍以上
かつ
使用総資本事業利益率10%以上又はインタレスト・カバレッジ・レーシオ1.5倍以上
(ウ) 純資産が5億円以上の中小企業
自己資本比率15%以上又は純資産倍率1.5倍以上
かつ
使用総資本事業利益率5%以上又はインタレスト・カバレッジ・レーシオ1.0倍以上
対象者の判定を具体的な数字で説明します。
貸借対照表(単位:百万円) | |||
---|---|---|---|
流動資産 | 100 | 流動負債 | 100 |
固定負債 | 150 | ||
固定資産 | 負債合計 | 250 | |
有形固定資産 | 200 | 資本金 | 100 |
無形固定資産 | 10 | 資本剰余金 | 20 |
投資その他の資産 | 90 | 利益剰余金 | 30 |
固定資産合計 | 300 | 純資産合計 | 150 |
資産合計 | 400 | 負債純資産合計 | 400 |
損益計算書(単位:百万円) | |
---|---|
売上高 | 500 |
売上原価 | 280 |
売上純利益 | 220 |
販管費 | 180 |
営業利益 | 40 |
受取利息 | 20 |
受取配当金 | 10 |
営業外収益合計 | 30 |
支払利息 | 40 |
支払割引料 | 10 |
営業外費用合計 | 50 |
経常利益 | 20 |
特別利益 | 10 |
特別損失 | 20 |
税金等調整前当期純利益 | 10 |
法人税・住民税・事業税 | 4 |
当期純利益 | 6 |
まず、純資産合計が150百万円なので、(ア)に該当します。
① 自己資本比率 =自己資本÷総資産
=150÷400=37.5%>20%
② 純資産倍率 =純資産÷資本金
=150÷100=1.5倍<2.0倍
③ 使用総資本事業利益率 =(営業利益+受取利息・受取配当金)÷総資産
=(40+20+10)÷400=17.5%>10%
④ インタレスト・カバレッジ・レシオ
=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷(支払利息+割引料)
=(40+20+10)÷(40+10)=1.4倍<2.0倍
以上より、①及び③を満たしているので、対象者となります。
上記対象となる中小企業者が発行する私募債について、信用保証協会が債務保証を実施します。
(ア) 保証限度額
4億5千万円
(保証割合が80%のため、発行価額の限度額は5億6千万円となります。)
ただし、セーフティネット保証を除く普通保証、無担保保証と合計での限度額が5億円となっております。
(イ) 保証料率
対象となる中小企業者の財務内容その他の経営状況を勘案して、各都道府県の信用保証協会が保証料率を決定します。社債総額に対し、おおむね0.45%から1.90%の範囲となっております。
なお、「中小企業の会計に関する指針」に沿った財務諸表(いわゆる決算書)を作成している場合や担保がある場合には、0.1%程度の割引があります。
(ウ) 保証人
不要です。
(エ) 担保条件
金融機関、信用保証協会の約定によりますが、原則として保証金額が2億円を超える場合は担保が必要となります。
(オ) 償還期間
金融機関、信用保証協会の約定によります。
当該制度申込時に金融機関又は信用保証協会に必要資料を提出することとなっております。必要書類に関しては、金融機関又は信用保証協会に問い合わせる必要があります。