曲げ作業においてその断面は下図のような関係がある。
中立軸に対し内側は圧縮応力、外側は引張応力が作用する。
中立軸は曲げ部分において必ずしも板厚のセンターではなく若干内側に移動する。
→曲げ部の板厚が減少する。
曲げ外力がはずれるとその圧縮、引張応力の反発により曲げ角度が開く、これをスプリングバックと呼ぶ。硬い材料ほどこの現象は顕著に現れる。
曲の展開寸法は、基本的に中立軸の長さを求めることにより得られる。
曲げ部の中立軸は板厚、曲げ角度にもよるが板厚の40~45%の位置となり、計算上経験値を採用する。
L=A+(R+T×40~45)×2π×θ/360+B
L中立軸移動率=経験値
L=展開寸法
A,B=曲げ応力のない部分の長さ
R=曲げ内R
T=材料の板厚
直角曲げの場合簡易的に下記計算方法がある。
実作業においてはこの方法が一般的に採用されており経験値で修正している。
L=A+B+1/2T
L=展開寸法
A,B=内側長さ
1/2T=板厚の約半分(経験により修正)
曲げ元にストライキング(後述)を入れた場合に適用。
曲げの展開寸法は、曲げ型の構造や曲げダイRの付け方、材料板厚や硬度の変化、また加工油の質と量で微妙に異なる。
また、後述する曲げによる問題点が原因して計算通りの結果とならないことが多い。
昔は複雑な曲げの場合、曲げ型を先に造り実験後ブランク(展開)を決めることがあったが、今はそんな時間も費用も許されない。
絞り曲げと呼ばれることもあり、曲げ型では一般的で殆どの曲げ加工でこの構造を採用されることが多い。
主な部品は曲げパンチ、ダイ、スプリングパッドで構成される。
曲げ位置等の寸法精度が安定し易く同時に複数の曲げ加工が行えるが曲げによる引張られが大きくその対策が必要。
曲げ直角度出しが困難で何らかの対策が要。
スプリングパッド力が弱いと製品平面度が不安定となり易く、強いと曲げ直角度が開き易い。
曲げダイのRは被加工材板厚の3倍程度が一般的。
(曲げダイR)
ヤゲン曲げと一般的に呼ばれ、簡易曲げ等に多く用いられる。
主な部品は曲げパンチとダイで構成され、金型費はU曲げ構造に比べて大幅に安価であるが、一箇所の曲げのみの加工となる。
曲げ位置精度は不安定であり曲げソリが発生し易い。
製品の曲げ側面と底面にそれぞれ凹み状の横筋が入る。
曲げ直角出しは比較的容易。
曲げ高さが低い場合この構造では曲がり難い。
ダイ肩幅は板厚の6~8倍が一般的。
パンチ幅はダイ肩幅と同寸が一般的。
被加工材はダイの両肩に乗っていないとスベリが発生し曲がらない。
製品機能を考えないとして、抜きバリは曲げ内側が理想
→曲げ外側が抜きバリの場合 バリ部にクラックが入り易い。
順送型において、バリに対する曲げ方向により金型構造は異なる。
バリが内側に曲げる方が、金型構造的に安価。また平面度等の精度も安定する。
U曲げ型構造においてはスプリングバック対策を考慮し金型を製作する。
その対策で一般的な方法としては曲げパンチ先端に突起状の出っ張りを設けたストライキング式とクサビ状のVノッチを曲げの前工程(ステージ)で打つ等の方法がある。
尚、スプリングバック対策と曲げによる引っ張られ対策を兼ねる場合が多い。
曲げパンチ先端に突起状の出っ張りを設けその部分を材料に食い込ませることによりスプリングバックを防止する。
ストライキングにより製品曲げ根本内側に突起幅分の凹みを生じる。
アウトサートが曲げ内側ギリギリで設計されている場合凹みに樹脂漏れが発生するので注意する。
ストライキングの幅は約板厚分とし最小は0.6程度、高さは高めに設定し、実験後調整する。
実験後低くするのは容易だが高くするは困難。
ストライキングはチッピングを起こし易いので曲パンチの硬度に注意を要する。
順送等でステージ増加が製品単価にさほど影響しない場合に適用することがある。
クザビステージと曲げステージが必要。
曲げ位置、直角度が安定し易い。
クサビにより製品曲げ部強度が落ちるため強度を要する部分には適用しない方が良い。
クサビの深さは被加工材の板厚の1/3程度で設定し、実験後調整する。
曲げの根本に三角形状のリブを入れると曲げ直角度は安定し易い。
製品の曲げ部強度は格段にアップする。
金型構成部品が増えるため金型コストはアップする。
曲げ幅の狭い部分の三角リブ設置は曲げ高さ方向の寸法精度が安定せず、伸びによる。
展開寸法算出に注意を要する。
三角リブの曲げ幅方向の位置は、中心より均等な位置を選択する方が良い。
実験後に展開を決めたいのは前述したが、実験をしたことによる失敗例。
バーリング形状の内径絞りで下穴(絞る前の穴)径を決める実験絞り型を先に造り、ブランクはドリルで穴を明けた。実験した結果きれいに絞れたので穴抜き型を造った。
実験の結果と異なり、バーリングの先端は割れるし高さも違う。
→穴の断面が、ドリルは横方向の筋に対しプレスは縦方向の筋。
結局、金型を作り替え。
実験方法を間違える、または手を抜くと思わぬミスとなる。