ねじ製造会社のセールスプロモーション

B ) ねじ製造会社 ( BBボルト社 ) のセールスプロモーション

前回は、設計会社のセールスプロモーションについて述べさせていただきました。

今回は、 「 ねじ製造会社 」 のセールスプロモーション について説明させていだきたいと思います。

今回、事例で採り上げる会社は、以下のような会社であるとします。

社  名) 株式会社BBボルト
創  業) 昭和25年3月28日
所 在 地) 神奈川県川崎市
業  種) ねじ製造・卸業
資 本 金) 3,200万円
売 上 高) 約12億円 <平成13年度>
従業員数) 48名(契約社員含む)
製   品) JIS規格ボルト・各種ねじ類
工   場) 神奈川県川崎市

「 ねじ / ボルト 」 という、機械部品の中のさらに部品領域に属する資材を製造している会社であり、従業員数48名といういわゆる 中小製造業の会社であります。

こうした中小規模の会社の悩みは、新しい商品開発を行うにしても、それを具体化するまでの技術蓄積や人材がいない。何よりも、こうした挑戦については、大きなコストとリスクが伴うが、それを賄えるまでの資金力もない。ということです。

逆に言えば、前回の8名ほどの会社であれば、何をやるにしてもリスクは少ないわけです。だから、ある意味発想を転換して 「 新商品 」 を即座に作り上げて、売り込むこともできたわけです。

ところが、企業規模も50名近くなってくると、そのような 大胆な試みは取り難いのが現実 です。

と、本セールスプロモーション講座の冒頭でお話しした会社とは、実はこのBBボルト社のような会社をイメージしています。

この会社の「商品」は何ですか?

さて、 「 商品 」 についてです。

もう少し詳しく見てみると、 ねじ / ボルト と言っても、JIS規格の標準品だけではなく、ユーザー側の要望や図面に従って設計・加工する 「 オリジナル製品 」 も多いことが分りました。

幸い、会社の中には 若手を中心に設計部隊が育ってきている こともあり、ユーザー対応型の加工ねじ/ボルトの部門に注力してきています。

今年は、技術系、営業系合わせて 新卒者 を縁故も含めて 3名入れた ようです。

どうも、商品 というものは、こうした  若手人材の能力を活かすことのようです。

他にどんな情報が必要ですか?

この会社の 「 商品 」 というものを見直していくために、
他にどんな情報が必要でしょうか?

それは例えば以下のような点です。

① BB社のお客様について詳しく知りたい

  ・ 直接のエンドユーザー取引きなのか、商社経由なのか?
  ・ いずれの場合でも、エンドユーザーはどのような会社か?

② 会社の商品分析についてもう少し詳しく知りたい

  ・ 生産可能な商品について、もう少し詳しく ( 技術レベル、生産レベル )
  ・ 製造している商品しか取り扱わないのか? 調達販売はしないのか?

③ 会社の人材(ここでは従業員48人とある)についてもう少し詳しく知りたい

  ・ 一人ひとりの技術、経験、能力について詳しく知りたい
  ・特に若手人材においては、その個性、意識、経営感覚も知りたい

ようするに、 「 お客様 」 「 商品 」 「 人材 」 の 3点 です。

実際のセールスプロモーション研修では、こうした事項を書き出しながら、ディスカッションをしていきます。これを 「 マーケティング会議 」 と呼んでいます。

その内容は後述するとして、こうしたことを行うと、多くの会社では以下のようなことが判明してきます。

  • ユーザー直接にしても、商社経由にしても、実際に自社製品がどのように使用されているのか、会社の中の誰も明確に把握していない。
    (ユーザーからの図面のまま製作しているだけ)
  • 下請けという位置から考えて、そのようなことをやる意味と必要性を強く感じていない。
  • それでいて、会社の技術力、品質力を語ると雄弁になる。
    また、売れるものは何でも売りたいと考えている。
    (言われれば何でも作れるし、調達販売も構わない)
  • 若手人材は、基本的に 「 能力不足 」 「 経験不足 」 という捉えられ方をされている。
    (個性や潜在力等を見てもらっていない)

「 中小企業 」 なのか、規模が小さくても 「 成長企業 」 なのかは外見からは見えないものですが、上記のような会社は 明らかに成長企業には感じません。

商 品

商品 として、マーケティング会議の中から導きだされた答えとして、「 若手人材の戦力としての活用 」 というポイントが表れてきました。

若手人材を 「 能力不足 」「 経験不足 」 と考える前に、まず 彼ら自身の能力が商品として成立する要素 を考えることにしました。
それは、今はできていなくとも、短期的に勉強していくことでできるようになることをも指しています。

そうすると、以下のようなポイントが見えてきました。

① 若い ⇒ 先入観なしに、新しいビジネススタイルを受け入れられる

( 提案型営業にもっていくことについても何の抵抗もない )

② ITの浸透度が高い ⇒ パソコン操作をはじめ、PCへの習熟度が高い

( 今は弱くても、中高年者に比較して覚えが早い )

③ 経験が乏しい  ⇒  経験がなくても売れるやり方に興味

( コンビニ世代と皮肉されるが、一方で手軽に売れる戦術を求める )

上記の ①、②、③ のポイントから新しい商品をつくれるか、それを考えてみてください。

なんとなく、イメージされてきたと思いますが、BB社の新しい 「 商品 」 として考えていくべきは、「 ねじ / ボルトの知識がなくても商品を選択できる情報 」 であり、 忙しい大手の購買担当者においても短時間で商品の選択 ⇒ 見積 ⇒ 発注 ⇒ 納品が完了できる 「 手軽な購買システム 」であると思います。

そして、それらの 情報購買システム「 I T 」 という武器によって代行させる ことによって、自らはより多くの大手企業の担当者と話を進める行動をとっていけばよいはずです。

考えられる手法としては、「 インターネット / Webの活用 」 が最適であると思われます。

ようするに、購入側の担当者が商品選択に関する適切な情報を収集し、いざ購入の場合においても、手軽に、しかも最適価格で購入できる仕組みをWeb上で作り出せば良いわけです。

さて、いよいよ セールスプロモーションの展開 についてです。

ターゲット

「 Webによる ねじ / ボルトの情報提供 と 購買システム( EDI ) の構築 」
ざっと言うと、上記のようなものを 「 新商品 」 としてつくりあげ、若手社員がメンテナンスしていくように仕組んでいったとします。

ここからは、本セールスプロモーション講座のいつもの展開になります。

さて、この商品の ターゲットは誰でしょうか?

上記 Web システムを利用するのは、○○○○○○である。
○○○○○○であれば、必ず上記 Web システムを利用する。
の 両者を満足させる ○○○○○○ はどのような言葉が入るでしょうか?

この問いもだいぶ繰返してきましたので、慣れてこられたと思いますが、ここでは以下のような言葉が当てはまってくると考えられます。

○○○○○○ = 

ねじ/ボルトの商社、あるいはユーザー企業の人であるが、そのどちらにおいてもねじ/ボルトについての利用に関する知識や経験について乏しく、選択についてはいつも苦心している人。

また、その中でもWebなどの浸透度は高く、自在に使える環境と習熟レベルを有しており、
人に聞くよりもこちらからの情報を自分の知識に加えようとする人。
( …プライドは高め )

上記の事項から考えて、中堅・大手クラスの設計、技術者 などがイメージとして上がってきます。

商社の担当者についても、こうした 大手クラスの人たちを対象としている人たち ではないかと考えられます。

ニーズ ⇒ 期 待 ⇒ キャッチ

この Web システム 自体が、 商品 であり、ニーズ と 期待 に対する 「 キャッチ 」 戦術 にもなっています。

ただ、実際の キャッチ は、こうした Web システム商品 として、中堅・大手クラスの技術者や、購買担当、あるいは商社などの営業部門などにPR していく地道な活動 になります。

それを、若手社員が自分たちで作り上げた仕組みとしてプライドをもって、頑張って進めていけば良いわけです。

クローズ

商談を行ってみて、ある程度先方が乗ってきて、いよいよ相手側に 「決定してもらいたい」 と思ったら、クローズ をきちんと行いましょう。

クローズ のポイントにあるのが、「 お客様の “ ニーズと期待 ” を確実に “キャッチ” している 」ということです。

ここでの クローズのポイント しては、お客様の声であるニーズと期待を Web 上からでも適宜受け止められる仕組みを作ること、そして受けとめるだけではなくて、こちらからも情報を随時提供していくことにあります。

その内容が、的を得て、リアルタイムであればあるほど良い結果が導かれるはずです。

最後に…

本演習で採り上げました 「 ねじ / ボルト 」 の会社というのは、私たち 株式会社ビジービー にとって関連の深い業界です。

ねじ業界のポータルサイト ねじJAPAN サイト(運営:株式会社ネジ・ジャパン)というものを企画開発しているほか、数々のねじ企業に対する 営業教育、B to B 等の支援をしています。

ねじJAPAN

一見下請け中の下請けの位置に見えるねじ製品が、 「 締結 」 というテーマの上で、あらゆる工業製品、住宅環境などの面で、なくてはならないものであることを、こうした企業の方々とのお付き合いから学び取りました。

今は、こよなくこの業界を愛しております。

頑張れ! 日本のねじ企業!

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