kataya

第一章:岐路

数日して拳磨は、吾朗、サヨとともに、事故でケガをさせた相手の元を訪ねた。
向かった先は、コンテナ置き場だった。そのひと隅に、窓を切って改造したコンテナの簡易事務所があった。コンテナ事務所が三段重ねられ、外に鉄の階段がついている。看板のようなものはなにも出ていなかった。吾朗は以前やってきたことがあるらしく、鉄階段をカンカン音させて上って行った。拳磨もその後に続く。
「うちの若いのが、とんでもないことになってしまってね」
室内に三人いる男のうち五十過ぎくらいのが、穏やかに言った。
その若いのというのだけが、応接ソファに座っていた。だが、ケガ人らしい様子はない。薄ら笑いを浮かべていた。
もう一人は三十代前半。身長が百八十センチ以上あり、全身が筋肉の塊のようだった。腕をだらりと下げて無言で立っていた。
三人とも黒いスーツに白いシャツでネクタイはなし。五月という季節柄、クールビズのサラリーマンのようだった。コンテナの中はクーラーが効いていた。
「本当なのか?」
と拳磨は言った。
「そのおネエちゃんで試してみてもいいよ」
五十年配が応える。
ソファの男がにたにたした笑みを浮かべながらサヨを見た。

(つづく)

SPECIAL THANKS
大内歯科クリニック・大内伸幸院長
株式会社タンデムサービス・小島恒夫会長

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