特集:鋳造・ダイカスト
新東工業株式会社の歴史は1927年、砂型造型機の完成から始まった。当時、豊田式織機株式会社において、豊田佐吉翁氏の影響を受けた久保田長太郎氏(のち二代目代表取締役社長)が、日本初の砂型造型機を完成させた。この出来事をきっかけに、同社は鋳造機メーカーとして歩み始めた。
1943年には、ジョルトスクイーズ小型造型機「F」型を完成させ、自動車部品の大量生産に貢献し、日本の鋳物産業の発展に寄与した。1970年代に入ると、鋳物製品に高付加価値を与えるための独創的な技術開発に取り組み始めた。1972年、真空を利用した鋳型作成の原理を応用し、世界初のVプロセス自動鋳造設備を開発。世界20か国に200を超えるVプロセスラインを納入してきた。この設備は、中~大物鋳物を美しい鋳肌と高い寸法精度で生産することができ、粘結剤を一切含まない乾燥砂を使用するため、廃棄物や有毒ガスの発散が少なく、環境に優しい鋳物づくりを可能にした。さらに、静圧造型法やエアレーションといった革新的な技術開発により、世界の鋳物業界を牽引し続けている。
2010年代以降、同社は電動型ロールプレス技術を開発に成功。電動化によりワークへの圧力を均一化できたことで安定した品質を確保。また、油漏れを解消し、クリーンな作業環境の実現に貢献している。この技術は、燃料電池や部品内蔵基板などの貼り合わせや成形に活用され、自動車部品等の先端分野に進出を推し進める。
このように、産業に欠かせない設備装置の製造・販売を行う同社。現在、表面処理事業・鋳造事業・環境事業の3つの主要事業を展開し、国内に22社、海外に32社の拠点を持っている。2023年3月期の全体売上高は、1,063億円であり、そのうち鋳造事業が全体の34%を占めている。
2010年代からは、『SINTO SMARTFOUNDRY』として、 “もっといい鋳物づくり”を目指した提案を行う。“品質”に着目した『Good Casting System』は、製品不良の要因を工程ごとに管理し、ばらつきを最小限に抑えるシステムだ。異常を検知する評価装置や製造履歴のトレーサビリティによる可視化などの手法を活用している。 “自工程完結”の考えのもと品質は各工程で作り込み、品質不良“ZERO”を追求。また、ニアネットシェイプ化や薄肉軽量化により生産性向上に取り組む。その一方で、創業時より公害や環境問題への対応を進めてきた同社。工場で働く人々へ悪影響を及ぼすチリ・ホコリを除去する集塵機は、国内トップクラスの納入実績を持つ。
さらに、今年4月には環境目標を更新。グループ全体でCO₂排出量を年率3%削減し、創立100周年に向けてカーボンニュートラルの取り組みを加速させる考えだ。
「かつて鋳造工場は3Kの代名詞でしたが、このイメージを変えたいと思っています。私たちは、もっといい鋳物づくりを実現するために、IoT技術を活用した高付加価値の創出と鋳物不良ゼロにチャレンジしています。そして、働く人の安全・健康が守られ、環境にも優しい最先端の鋳造工場をご提案しています。従来のカン・コツ・経験に頼らず、データ分析を用いた自工程完結型のモノづくりに注力しています。これらの取り組みが、お客様に選ばれ続けることにつながると確信しています。」と、社長の永井淳氏は語る。
技術やノウハウを生かし、既存事業以外の分野でも課題解決を目指す姿勢が、鋳物業界の発展と挑戦を支えている。
住所 |
〒450-6424 |
---|---|
TEL |
052-582-9211(代) |
URL |