特集:自社商品開発

株式会社プラモール精工

株式会社プラモール精工

株式会社プラモール精工は、宮城県仙台近郊でプラスチック金型製造、及び成形加工を行っている。プラモール精工は、プラスチック金型製造業として1983年に創業した。もともと専業の金型メーカーなので金型製造には定評がある。その後、成形加工も行うようになり、2011年に中国に工場を建設し業容を拡大していった。その同社が自社開発したガス抜きピン“ガストース”等について、脇山社長にお話を伺った。

株式会社プラモール精工スーパーガストース

自社商品であるガストースは、2009年のリーマンショックの最中での新技術誕生だった。当時、市場クレームが繰り返されていた12個取りの金型(もとは24個取りの金型)が移管され、成形したところバラツキが多く、選別検査で良品を取り出すしかなかった。その後ゲートバランス等を調整し、バラツキを抑え品質が安定し市場クレームをなくした。
後に受注数が増えたことで24個取りに改造する要請があり、24個取りに改造したところガス抜けが悪くなりウエルド(樹脂同士が合流したところに出来た溝)がひどく、壁に穴あきが発生。脇山氏は以前からエジェクターピン(製品を金型から押し出すピン)からガス抜きをすることを考えていた。ピンの外径を加工したものは販売されていたが、排気面積が少ないのがネックであった。
中心部に樹脂が漏れない溝穴を何層も設け、裏をパイプ状にしてガスを逃がす方法に挑戦し見事完成出来た。そのガス抜きピンを使用した結果、見事にウエルドが消えた。当然最初は苦労も多く、コストもかかった。しかし、その甲斐あって、射出成形する際、金型内部のガスを綺麗に排出し、安定性を格段に引き上げるエジェクターピンやコアピン(固定されたピン)を開発することに成功した。
これが“ガストース”だった。

軌道に乗るまで

ガストースの開発成功は嬉しかったが、リーマンショックの威力はすさまじく、当時、株式会社プラモール精工の売上は大きく落ち込んだ。しかしガストースの評判は上々で、「これは売れる」と確信した脇山氏は2010年4月に販売を開始した。ただ、それまでには世の中になかった商品なので、最初はすぐに樹脂が詰まって使えなくなるのではと、躊躇するお客様も多かった。詰まらなくする方策を全国でセミナーを開催し説明しながら進めて来た甲斐もあり、今では全国の成形工場から注文を受けている。
2011年に特許を取りその後、超モノづくり部品大賞『奨励賞』を受賞するなど、高い評価を得ていく。ガストースの売り上げが好調に推移する中、既に進出していた中国工場の業績の不安定さが目立つようになって来た。以前から国内のガストース開発と、中国工場の運営という両輪は負担が大きいと感じていた脇山氏は、国内1本でやっていくことを決意。2015年、中国工場を撤退し、国内での成形加工と共に、ガストースを始めとする成形加工の品質向上と生産性アップに貢献できる商品販売の道を選んだ。

ガストース等これからの展望

ガストース誕生から13年。今度は、ガストースを使用することでパーフェクトなガス抜きを明示できる流動解析(CAE)を、CAD/CAMメーカーである株式会社セイロジャパンと共同で実現した。型技術誌2022年7月号(日刊工業新聞社の型技術情報)に掲載されている。解析の結果、数値は非常によく、性能が証明されている。CAEによる解析でガス抜き位置を設計に反映させると、金型製作時の試作回数が大幅に削減出来、成形時の生産性も飛躍的にアップ。更に実験も繰り返しデータを増やして強固な裏付けを取っていく。お客様である金型屋、成形屋にとってありがたい分析評価システムになっていく。
さらに様々な自社商品の開発に力を注ぎ、ラジエタースプルー(糸引き防止)レボスプルー(サイクルタイム短縮)レボゲート(ゲート凸改善)エアトース(エア抜き)など様々な品質不良対策や生産性アップに貢献出来る商品が開発されている。
ガストースは今も進化を続けている。次の段階として注目しているのは「吸引」である。昔から真空引きを理想として多くの会社が挑戦してきたが、殆ど惨敗であった。0.01~0.03mm程度の一筋の吸引口から吸引しても、真空になるまでの時間がかかり過ぎ、現実的ではないと。
そこで株式会社プラモール精工では、吸引部の開口率をアップする方法として、開口溝のピッチを0.1mmまで狭くしたものを開発。“スーパーガストース”と命名。
吸引面積を格段に増やせたので、500mlのペットボトルで吸い込みの実験した結果、数秒でつぶれることが分かった。更に樹脂カスまでも吸引が出来、効果も抜群。試験的製作した0.05mmピッチも成功し、いずれ販売予定。

ラジエタースプルー(完全糸引き防止スプルーブシュ)

レボスプルー(星形スプルーブシュ)

レボゲート(2点・3点ゲートブシュ)

エアトース(エア抜き装置)

SDGs によるカーボンニュートラルに貢献

株式会社プラモール精工の開発商品は稼働率アップ、品質不良削減、成形材料の廃棄率削減に寄与することで、SDGsによるカーボンニュートラルに貢献できる先端を走る企業として期待したい。

株式会社プラモール精工

本社

〒981-3351宮城県富谷市鷹乃杜4-3-5

TEL

022-348-1250

FAX

022-348-1244

URL

http://www.plamoul-seiko.co.jp/

 

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