特集:ロボット・エンジニアリング
ロボット導入に尽力したメンバー。
代表取締役高野英治氏(右)
人材募集も育成も難しいのが、中小製造業の現状だ。せっかく仕事を教えても多くの人が長続きせず、経営者や現場の担当者にとって、大きなストレスとなる。また、同業種の大手商社のカタログ等を基準とした価格交渉に売上を圧迫されることもある。
そうした現状を冷静に見たとき、社長の高野氏は、まず「それまで雑多に行なっていた受注品を分類する」ことから始めたという。価格競争に巻き込まれず付加価値を生み出すには、特注品に力を入れなければならないからだ。
同社は金型部品の加工を請け負っているため、すべてが受注生産であり、1点あたり5本以内という加工品が80%を占める。多品種小ロットではあるが、単なる多品種小ロットではなく、標準部品があることが特徴だ。サイズのバリエーションを考えると数十万点になるが、製品記号としては500種くらいに収まるという。
そこで、標準品と特注品を分けたあと、標準品は海外からの研修生やロボットが担当し、特注品を熟練工が担当するように振り分けた。また、同社では通常注文から中2~3日で納品しているが、最速の場合は15時までの注文に即日対応している。こうした顧客ニーズに応えるために、人のラインでは半製品から加工し、一方のロボットラインは、素材からの削り出しで加工している。
研削加工後に画像測定で品質をチェック
同社では、ロボット導入に先立ち、まず工場の理想像を描き、どの部分をロボットに担わせるかというビジョンを明確にした。これからの人手不足に備えて、女性をはじめとする多様な労働力を活用していくために何を準備しなければならないのか。そして、長期戦略の一環ではあるが、成功するかわからないロボットラインに対する研究開発として、どのように高額投資をしていくのかだ。同社では、ものづくり補助金などをうまく活用し、安定した成長が見込める事業計画を立てることができた。
今回のロボット導入に手応えを感じている高野氏は「ロボットの活用を拡大して行ったときに、どんな体制にしていくべきか」と未来の構想を描く。
このように、ロボット活用のイメージが明確になったのは、「株式会社三井ハイテックの研削盤に出会ったことが大きかった」と言う。実際問題として、ロボットを使用した自動化の実現には、従来では人がその都度判断していた作業を、解析し標準化することが前提となるが、三井ハイテックは、同社からの相談に対する的確な回答がすでに用意されていることが多く、迅速な対応が望める。こうした使い込んでいる安心感が、同社の身の丈にあったロボット導入の手応えに繋がった。
ロボットラインで研削した金型部品
こうして、クリアランス0.1mm以内で治具を装填し、10μm(1μm=1/1000mm)以内の加工公差を実現する高精度の円筒研削工程の自動ライン構築に成功した。
また、導入過程を見ていた若手メンバーが、ロボットラインを担当したいと手を挙げ来るという嬉しい副産物もあった。「導入してよかった」と笑みをこぼす高野氏は、ロボットを基軸として人がチャレンジできる環境を整え、もっと大きな会社全体のイノベーションに取り組んでいく。
所在地 |
住所: 〒373-0022 群馬県太田市東金井町1237 |
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TEL |
0276-22-6270 |
URL |
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創業 |
1967年 |
エミダス会員番号 |
82001 |