特集:ロボット・エンジニアリング
経済産業省 ロボット政策室 小林寛氏
2015年2月に日本経済再生本部において決定された「ロボット新戦略」では、「ロボット革命」の実現に向けて、我が国として世界一のロボット利活用社会を目指すこととしている。
この方針を受けて経済産業省では、ものづくり・サービスの分野のうち、これまでロボットが活用されてこなかった領域においてロボット導入の実証や検証を進めていく「ロボット導入実証事業」をはじめとして、幅広い分野でのロボット活用に向けて様々な取り組みを進めている。
その一つが、メーカーとユーザーを繋ぐ役割を果たす「ロボットシステムインテグレータ(ロボットSIer、以下SIer)」の育成・強化だ。ロボットメーカーが販売する「産業用ロボット」には、物をつかむためのハンドは付いておらず、動き方も教えられていないが、これをセンサや周辺設備と組み合わせて自社の生産ラインに適合するようにロボットシステムを構築していくのは、中小製造業にとってはハードルが高い。そのため、ロボットシステムの導入提案や設計、構築等を行い、多種多様な現場の自動化ニーズに応える役割を担うSIerの存在が鍵となる。
しかしSIerにもそれぞれ得意分野があり、ユーザーにとっては、どのSIerに依頼したらいいのかが見えにくいのも実状だ。また、SIerの多くが中小規模であり慢性的な人材不足という課題もあるなど、いかにユーザーとSIerをうまくマッチングさせる仕組みを作れるかが重要だ。
そこで、SIerが中心となり、平成30年度中での設立を目指しているのが「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」である。今後この協会をビジネスネットワークのハブとして、インテグレータが活躍しやすく、ユーザーにとっても透明性のある環境を整えていく方針だ。
まず、ロボットを導入するには、「ユーザー自身がロボットを使いこなしていくイメージをしっかり持ってもらうことが必要」と、ロボット政策室の小林氏は語る。そのためのサポートとして、ロボット活用に関するポータルサイト「ロボット活用ナビ(http://www.robonavi.com)」を公開。
ここではロボット活用の基礎知識のほか、導入実績の動画を公開するなど、様々な事例を見ることができる。例えば、塗装や溶接工程へのロボット導入という身近な事例のほか、伝統工芸品の加工にロボットを導入し、職人技とロボットの融合を実現した事例など、必ずしも大量生産向けではない事例もあり、自社の工場の将来像を描くヒントを得ることができる。
また、ロボット活用ナビでは、すでに登録されている200社近いSIerの情報を見ることができるほか、「スキル標準」や「導入プロセス標準」といった資料が公表されているので、こうした基準も参考にしてSIerを探すことができる。
その他に経済産業省では、IoT・ロボットの導入や現場カイゼンなどに知見を持つ専門家を配置して、中小企業の課題に応じた改善策や技術をアドバイスする「スマートものづくり応援隊」の活動拠点の整備も進めている。
そして何と言っても、「若い人たちの柔軟な発想をものづくりに生かし、世界に誇る日本のものづくりを伝えていく方法として、ロボットは次世代のための投資だと思う」と、小林氏は力強く締めくくった。
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