特集:リクルート・教育
代表取締役 社長 山岡靖尚氏
「文系だったので、入社当時は本業を知ったら購買部門に行くと思っていました。でも、いまは加工が大好きです。思うように加工できた時が一番嬉しい」。そう語るのは、入社12年目の内田和志氏だ。先輩たちから丁寧に教えてもらったし、だから自分も当たり前のこととして後輩に教えている。
内田氏が担当するのは±2ミクロンという超精密加工。順送金型や半導体や電子部品のコアとなる精密部品の加工だ。難易度が高い仕事がたくさん来るので、後輩にはすぐに戦力になってほしい。人に教えるときに一番大切なものは何かを聞いたところ、「時間。根気強さが大切」とのことだった。教える側の責任感と教わる側の自覚を合致させ高度な技を伝えて行くには、1人ひとりにあった教え方が必要だ。
同社では、スイッチを押すだけではできない超精密な加工をしているため、現場での技術教育が実力の要となる。加工では、理論や理屈だけではなく、全身の五感を研ぎ澄ますことが必要となるが、例えば加工時の音は、人それぞれ聞こえ方が少しずつ違う。
そこで、教える側が正確な音を何度も聞かせて、確かな基準として染み付くまで繰り返し教え続けることが必要となる。このように感覚でしか得られない実感は、経験としてその人の中に蓄積されるまでに時間がかかるし、習得のスピードは人それぞれだが、この積み重ねを諦めない仕組みが同社の教育制度の魅力だ。
半導体リードフレーム順送金型
同社が独自に取り組む「山岡技能経営(Management Of Skill)」は、7つの柱が相互に関連しながら、一生涯の成長を目指すものだ。それぞれの内容は同社のホームページで紹介されているのでここでは割愛するが、さまざまなスキルアップの機会提供、目標設定と評価、OJTする側の評価など、自己研鑽とそこで学んだ経験を共有する仕組みが確立している。
例えば、各人のスキルは「未経験」から「指導が出来る」まで、ILUOチャートでレベルが明示される。そうすることによって、目標までのマイルストーンが明確になるばかりか、習熟レベルに給与も連動しているため、職人技を公正に評価することができる。
先代の社長が始めた教育制度は、いま課長クラスが推進委員として集まり、日々進化させている。社員も、平日の早朝や土曜日などの時間を使って、スキルの習得に熱心だ。そして、お互いに教えあう企業風土は大家族のような結束をうみ、離職率は低い。
また、同社は常に高い利益率を確保し、安定した経営を継続する。その強さの秘訣を、社長の山岡靖尚氏は「何が強みかと言ったら、それは、もちろん『人』です。機械の精度以上のことを人がやるんです。だから人がすべてなんです」と語る。
いま新卒の採用は学生の売り手市場だが、大手メーカーが必要とするコアな部品に技術が生きていると説明すると、優秀な人材が入ってきてくれるという。学生にとっても、同社独自の教育システムは魅力だ。現在、少しずつ現場で活躍する女性社員も出てきており、文系でも女性でも、やる気さえあれば大丈夫だという。挑戦する人を応援する仕組みと、その人その人に心から向き合うOJTが同社を強くしている。
所在地 |
〒610-0101 京都府城陽市平川横道93 |
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TEL |
0774-55-8500 |
URL |
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infor@yamaoka.co.jp |
設立 |
1938年 |