特集:宇宙
1. 月面に純民間開発ロボット探査機を着陸させること。
2017年12月、HAKUTOの月面探査ローバー「SORATO」は、TeamIndusの月着陸船「TeamIndus HHK」に相乗りし、インド宇宙研究機関(ISRO)のロケット「PSLV」によって宇宙空間へと飛び立つ。約38万km離れた月へ約1ヶ月間かけて航行し、月の「雨の海」に着陸。
2. 着陸地点から500メートル以上移動すること。
面の温度は過酷だ。昼の表面温度は100℃以上、夜は-150℃以下という厳しい温度環境の中、むき出しの月面を500m以上走行。
3. 高解像度の動画や静止画データを地球に送信すること。
搭載しているHDカメラで360度の景色を撮影し、高解像度の動画と静止画パッケージ「Mooncast」を地球に送信。
『HAKUTO』は世界初のロボット月面探査レース「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」に挑戦している。
Google Lunar XPRIZEとは、民間組織による月面無人探査を競う総額3,000万ドルの国際賞金レースで、Googleがスポンサーとなり、XPRIZE財団によって運営されている。今回の目的地となる月は、太陽系をはじめとする宇宙探査の発展の鍵を握り、科学技術の発達や資源利用への期待ばかりか、将来、人間の居住空間となっていく可能性をも秘めている。
本レースは、民間による宇宙開発を加速させ、宇宙産業の拡大、市場への投資を促進し、中長期的に繰り返し月面にロボットを送り込めるビジネスの育成をすることを目的として開催される。この企画は今回で終わりではなく、人類の未来に大きく、継続的に貢献していくことになる挑戦なのだ。
科学技術の粋を集め、柔軟な発想とアイデアで挑む世界の精鋭チームたち。レースの1位のチームには2,000万ドル、2位のチームには500万ドルと、世界クラスの挑戦にふさわしい賞金も用意されている。
このレースには16チームがエントリーし、それぞれ独創的なプランで挑戦を続けていたが、2017年1月24日、最終フェーズに進むことができるチームが5つに絞り込まれた。勝ち残ったのは、SpaceIL(イスラエル)、Moon Express(アメリカ)、Synergy Moon(インターナショナル)、TeamIndus(インド)、HAKUTO(日本)の5チームだ。
HAKUTOは、日本から参加する唯一のチームで、株式会社ispaceが運営している。このチームには、ベンチャー、大学、そしてプロボノと、様々なバックグラウンドをもった人材が集まり、それぞれの得意分野を持ち寄って月面探査ローバーの開発を行っている。
2015年1月には、月面ミッションを達成できる能力のローバーを開発したその技術力が評価され、Google Lunar XPRIZE中間賞のモビリティ部門を受賞し、賞金50万ドルを獲得している。
おその後、ローバーは進化を遂げ、放射線試験、振動試験、熱真空試験、結合試験、月面を模した砂丘でのフィールド試験を成功させてきた。
2017年8月には、鳥取砂丘での最終フェーズを無事にクリアし、いよいよ月に向けて最終段階に入った。9月には、いよいよ打上げのためにインドへと出発し、12月にはインドのサティシュ・ダワン宇宙センターから打上げられる。打上げ後、約1ヶ月かけて月へと向かい、2018年1月、月面に着陸。ローバーによるミッションが始まる。
オフィシャルパートナーのau/KDDI株式会社、プロジェクトを支援するコーポレートパートナー6社、技術やノウハウを提供するサポーティングカンパニー23社とともに、日本企業の技術を結集してミッション達成を目指す。
■超小型・軽量ローバー
最小限の機能を搭載し、重量わずか4kg。宇宙への打上費は重量に比例して上がり、1キログラム変わるだけで億単位のコストが変化すると言われる。日本が得意とする小型化思想をふんだんに取り入れて開発。
■民生品活用
小型化、低コスト化のために、多くの部品は民生品を使用。
■耐振設計
ロケット打ち上げ時、そして月面着陸時と、ローバーは様々な振動に耐えなければならない。解析と実験を繰り返し、軽量ながら振動に耐える構造を実現。
■熱対策
月面の昼夜の温度差は250℃以上。ローバー内部の温度環境を一定範囲で保つため、ボディ外面を銀テフロンにするなど、熱収支をコントロール。
■360度カメラ
カメラは360度を撮影できるよう前後左右4 ヶ所に設置。また、ホイールや地面状態を写し走行状態をモニタリングする役割も担う。
■通信
折りたたみ式の自立アンテナを搭載。ローバーの天面から270mm以上の高さにすることで、より遠くまで届き、まわりの環境からの影響にも強い通信を実現。
■ソーラーパネル
より軽量で長時間の運用を実現するために、充電用ソーラーパネルを搭載。太陽光角度に対して最も効率よく発電するために、ボディのサイドに配置。
■CFRP構造
軽くて強い素材であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)をボディなどに多用。この素材は、近年、航空機やロケットの構造材としても使われている。
■ホイール
月面は、レゴリスと呼ばれるパウダー状の砂で覆われている。非常に軟らかいその地面でスリップせずに走行するホイールを開発。設計当初は、金属で作っていたホイールだが、現在はウルテム樹脂を利用。耐熱性と強度に優れた素材である。
2007年9月 | Google Lunar XPRIZE 始動 |
2008年4月 | HAKUTOチームエントリー |
2011年8月 | PM1「プロトタイプモデル1」完成。10kgに設計した4輪タイプの小型軽量ローバー。360度カメラを装備。 |
2012年4月 | PM2「プロトタイプモデル2」完成。細かな砂の上で走行実験。 |
2013年4月 | PM3「プロトタイプモデル3」完成。「 Google Lunar XPIRZE」の月面ミッションを地上で達成。 |
2013年12月 | エンジニアリングモデル 完成。フィールド実験を行い実効性を検証。 |
2014年8月 | PFM1「プリフライトモデル1」完成。振動試験・熱真空試験をクリア。 |
2015年1月 | Google Lunar XPRIZEモビリティサブシステム中間賞を受賞する。 |
2015年2月 | 打上げ計画発表。 |
2015年8月 | PFM2「プリフライトモデル2」完成。さらなる小型・軽量化のため1台構成となる。 |
2015年10月 | PFM3「プリフライトモデル3」完成。熱収支のシミュレーションをもとに、ボディ外面の銀テフロンコーティングを検証。 |
2016年8月 | FM「フライトモデル」デザイン発表。 |
2017年3月 | FM「フライトモデル」完成。 |
2017年12月 | 打上げ・ミッション実行。 |
2018年1月 | 月面到着 ミッション開始 |
注)
PM: 基本機能の実現性を地上で検証するために開発するモデル。
EM: 地上でシステムの実効性を検証するモデル。
PFM: 打上げや宇宙環境に耐えうる部品や構造を設計に組み込むモデル。
FM: ミッションに最適化したデザインで、実際に打上げるモデル。
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