特集:「食」のものづくり
職人の心と技が光る研磨
卸問屋かと見紛うほどの、ありとあらゆる品が並ぶ。トング、コップ、ステンレスたわしといった小物から、ケーキの型やホテルのビュッフェ用保温器、雪かき用のショベルやヘルメット。はたまた、さまざまな分野の筐体等、製造品目は幅広い。
遠く越後山脈を望む新潟県燕市は、ステンレス洋食器の産地として日本のみならず世界に名を馳せる。その燕市において、加工技術でトップを走り続ける日本メタルワークスにお邪魔した。
創業は1959年。プラザ合意、高度経済成長期、バブル崩壊、リーマンショック、時代の荒波を超えてきた同社がたどり着いた答えは、「バランス」だ。
現在社員は約20名いるが、その全員が多能工で、女性でも研磨をする。それぞれ得意分野はあるものの、作業標準化を進め、全員が全工程をまんべんなく担当できるため、さまざまなリスク回避ができる。例えば、手作業による研磨は、職人の心がこもり、ついついやり過ぎてしまいがちなので、どこを仕上がりとするかを見極めるにも、バランス感覚が必要だ。
そして、経営。現在、OEMが3分の2、自社製品が3分の1だ。これが経営を安定させるいい塩梅で、身の丈以上の売り上げを求めようとはしない。時代によって、こんなものを作っていてはだめ、あれはだめと言う人もおり、特に燕市は同業者が集まっていることもあって、大きな流行も顕著だ。
そのような中でも、現場シーズを捉え、他社の真似はせず、作るもの、売上げの構造、すべてでバランスを守る。そして、量販店で売られるようなステンレス製品はだめと言われていた時期に、あえて流行に逆らい、カニ割りスプーンを自社ブランドで出してみたりする。テレビショッピングからの誘いもあったが断り、独自の直販路線を行く。特許も取得し、現在は業務用として手堅い人気があるが、これも後から振り返ると、業界・商流全体を見てバランスをとった結果だと言えるのだろう。
工場にお邪魔した際には、ちょうど万能スコップを製造していた。衛生面が重視される食品用のステンレス製品では、つなぎ目をなるべく少なくするために、1枚板を温間絞りで成形し、人の手による研磨で仕上げていく。どのくらいの温度でどう圧をかけるのか、独自のノウハウをもとに、素材の変質を防ぎながら軽々と、しかし丁寧に仕上げる。ハンドルの部分は持ちやすいように、柄の両端が少し平らになっており、テニスラケットのグリップのように、ぴたりと握れた。
ロングヒットになっている抗菌ステンレスたわしは、素材自体が抗菌性を持ち水切れが良いため長持ちする。他社ではなかなか真似できない品質だ。
創業以来培ってきたノウハウ、設計や商品化のアイデアに加えて、バブル崩壊後、外国勢の追い上げにあった中で進めた多能工化・多分野化・多ルート化により、ますます柔軟な体制が整った。同社の坂口社長は「バランスで、泥くさくやっていく。社員を守って行くためには、それが大切」と笑う。
技術力がある中小企業が生き残って行くノウハウが、日本メタルワークスには詰まっている。
設立 |
1959年 |
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所在地 |
〒959-1233 新潟県燕市殿島2丁目10番19号 |
TEL |
0256-63-3611 |
FAX |
0256-62-6805 |
URL |
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info@nmw-j.co.jp |
事業内容 |
国内、輸出向け金属製品および各種パーツの製造販売。 |