特集:「食」のものづくり
肩筋入れ、ささみ取りを自動化したイールダス3000
1924年に製氷冷蔵業からスタートしたマエカワは、産業用冷凍機の開発、製造、及びそれら冷凍機を用いた冷却プラントの設計・施工、冷却エンジニアリング、またその設備のサービスを事業の柱として成長。産業用冷凍機で世界トップクラス、冷凍運搬船の冷却設備では世界シェアの8割を誇る。冷凍マグロから美味しい野菜まで、食に欠かせない熱の管理で私たちの生活を支える。
同社には、こうした食品関連の顧客から、冷却プラントの前後工程を担う機械も開発してほしいという要望が多く寄せられ、これまで様々なシステムを開発してきた。その代表格が、脱骨・除骨ロボットシリーズの「DAS(ダス)」だ。
肉は、形、大きさ、硬さなどの個体差がある。肉の中から見えない骨を取り出す加工は難易度が高い。「DAS」ブランドでは、鶏もも肉加工ロボット・トリダスが10年の開発を経て、1994年に発表。現在食鳥分野ではトリダス、イールダス、ハービダスを中心とする全体システムがあり、食肉(豚肉)分野ではハムダス-RX、ワンダス-RXを中心とする豚除骨自動化システムがある。
日本で流通する食鳥・食肉のほとんどが、骨のない「食べやすい」状態で届く。不定形で軟弱な対象物を、見た目がきれいな上に、歩留まりよく仕上げるロボットの開発。これは匠の技を機械に移植する挑戦だった。
開発のスタートから今に到るまで、技術者は全員が自分の手で鶏の解体ができる。肉、筋、膜など生体の構造を知り、上手な解体のイメージを掴んでから、それを機械に置き換えていく。機械から肉を見るのではなく、肉を見て設計していくのだ。
しかし、それは人の五感による総合判断を基軸にするということで、ロボットには難しい。その溝を埋めるのが同社の加工ロボットに搭載されたセンシング機能だ。画像処理やX線によって肉の内側にある関節や骨の位置を調べ、割り出した情報をもとにカット位置を自動調整する。また、加工工程での稼働状況に関わる情報が管理され、ビッグデータとして蓄積、活用されていく。世の中がIOTと勢いづく前に、同社ではIOTによるシステムづくりを進めていたのだ。
同社は世界各地に拠点を持つが、「DAS」の機械心臓部は100%国内生産している。日本の消費者は、輸入肉にも日本並みの品質を求めるので、味を左右する温度管理から見た目まで、その要求水準は高く、同社の機械で加工しなければ商品とならないからだ。
「DAS」ブランドは、肉から骨を美しく「取り出す」から命名された。ロゴには、独自のロボット技術と日の出のイメージを重ね、日本から世界に自動脱骨・除骨技術を発信していく、世界中の顧客ニーズをつかむ、というチャレンジ精神が表現されている。
日本が得意とするきめ細やかな気配りは「DAS」ブランドにも凝縮され、人手同等の品質で衛生的かつ高速だ。
一方で、牛や豚の食肉加工は、鶏に比べ自動化が遅れているという。今後の少子高齢化を支える更なる開発が待たれる。
設立 |
1924年 |
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所在地 |
〒135-8482 東京都江東区牡丹3-14-15 |
TEL |
03-3642-8181 |
URL |
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事業内容 |
冷却技術、圧縮技術をベースとした製品、サービス、エンジニアリング。 |