No.64816 ASM金型分科会の記事
2006-03-12 03:47 投稿者: 大同 リンク:
削除キー (?)
静かな革命(見えない合理) 米国バークレー教授 J.W.モーリスJr. 我々の消費社会を支えている基盤は大量生産であり、それを支えるコアコンピタンスというと、製品へ転写する基準の情報の質である。IT技術は電子の力で、コピーを繰り返しても劣化しない究極を発明した。しかし、人類の肉体は電子ではなく、原子で構成されたものであるため、いくらLSIチップの電極の密度を狭めても人間が操作するボタンのサイズは変えられない。電子機械も、付き合う人類が原子機械なので、原子機械としてのインターフェースに還元する必要があるからだ。自動車は人体よりも 小さく出来ないという古典物理の世界が未来永劫産業社会というものは支配し続ける。しかし原子機械により転写を続けてゆくと摩滅するという電子世界では非常識な事態に陥る。 現在、アメリカで使用する金型の比率は日本製のものが増え、去年一年間で100%もの伸びを示している。日本人は日本刀というものをこよなく愛し、単なる武器だけではなく、美術品としての価値を見いだしてきた。これは日本の武士道と深いかかわりがあり、西洋の基準でいくと過剰品質とも思われがちな側面がある。しかし、それは実は科学的根拠と合致する。日本刀は、西洋の刀剣に比べ硬いが、何故脆くないのかは、材質の優秀性とそれを鏡のように磨く執念である。表面の凹凸は破壊力学的に考えると欠陥であり亀裂発生の原因になるが、鋼を硬くしてゆくと小さな凹凸にも敏感に反応して刀が破壊してしまうからである。 磨く執念を日本人は科学的に追求し、工作機械のトップの位置付けにある。我々アメリカ人は電子機械のみが未来と考え原子機械への投資を怠ってきたが、日本は原子機械への投資を不況の中継続してきている。これが金型の優秀性に結びついていると言えよう。ドイツも原子機械への執念は強いが、世界的に見て電子機械への傾倒が遅れたため、電子化してしまえば些細な事、つまり取るに足らない問題が累積する効果への配慮が遅れていたため、日本の優秀性からは半歩退く形となっている。 ここで原子機械の転写に関する核心を述べると、摩滅しないことが重要だが、加工できないと意味を 持たないというグローバルな視点が重要で、その理不尽な問題を解決してきた物質とは何かと考えざるをえない。視点が発散してはいけないので、同じ物質でその物質を加工可能にする最も優れた素材は何かをまず考えるべきだろう。アルミでアルミを加工していることも聞いたことがないし、高分子で高分子を加工しているのも聞いたことがない。セラミックスでセラミックスは加工できないし、と思いをめぐらせると、鉄で鉄を加工しているという神秘に改めて気がつく。まさに金型がそれを実践している。 我々アメリカ人は、不透明感を科学的に解決したが、脆弱な伝統しかないという一点においては、 他の民族の価値観も尊重すべきである。私は鉄鋼の分野から、その発想だけ抽出した研究を行ってきたが本当に鉄が大事なのは強靭性ではなく、鉄の持つ強靭性をベースにした社会的貢献である。その点は、最近になってようやく日本人の努力を契機に理解している。
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