圧入しろは、軸と穴の寸法差によって生まれる干渉力であり、部品同士を強固に結合するための重要な設計要素です。しかし、時間の経過とともに材質が変化することで、初期設計時のしろが変化し、性能や信頼性に影響を与えることがあります。この記事では、経年変化による圧入しろの変化とその対策について解説します。

①経年変化が“しろ”に与える影響
圧入部品は、長期間にわたって温度・湿度・振動・荷重などの環境にさらされます。これにより、以下のような変化が起こります。
• 部品の収縮・硬化
→ 吸湿性のある樹脂（ナイロンなど）は乾燥・硬化により収縮し、形状に変化
→ 応力集中による割れや変形が発生
• 金属の疲労・酸化
→ 微細な塑性変形や酸化皮膜の成長により、接触面が変化
→ 摩擦係数が変わり、保持力が低下
• 潤滑剤の劣化・揮発
→ 圧入時に使用した潤滑剤が揮発・硬化し、摩擦力が変化
→ 抜け荷重が低下し、振動で緩むリスク

②実際のトラブル事例
事例①：スリーブの収縮による割れ
軸に樹脂スリーブを圧入。初期は安定していたが、3年後に割れと異音が発生。原因は樹脂の乾燥による収縮で、しめしろが変化し応力集中が起きた。
対策：
・材質を変更し、原因となる吸湿性を低減
・しめしろを見直した、また形状変更による応力分散
事例②：金属部品の酸化による抜け
屋外機器のアルミ軸×ハウジングの圧入部で、数年後に抜けトラブル。酸化皮膜の成長により摩擦力が低下し、保持力が不足。
対策：
・表面処理で酸化を抑制
・しめしろを再設計し、抜け荷重を確保

③可能な予防策
• 材質の経年劣化特性を確認する
→ 樹脂なら吸湿率、金属なら酸化・疲労特性を考慮
• 使用期間のしめしろの“変化幅”を予測する
• 荷重監視で異常変化を検知する
→ 圧入力・抜け荷重の変化をモニタリング　（当社圧入装置では可能です）

まとめ
　経年変化など時間とともに変化する“動的な要素”には見越した対応を行うことで、長寿命・高信頼性の製品づくりが可能になります。初期性能だけでなく、数年後のしめしろの姿を想像する力が求められます。

　下記記事も参考下さい
自動化時代の圧入しろ設計 ― 圧入装置化に最適な圧入しろ
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高温環境で使う接合部品の落とし穴とは？圧入編
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圧入しろとは？
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適切な圧入しろとは？
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圧入しろの精度を高める技術
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圧入してみよう、荷重が知りたい
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◆ティーエイチエーの取り組み
株式会社ティーエイチエーは、自社製作による装置や治具を通じて、製造現場の品質安定と工程最適化に貢献しています。圧入時の荷重やストロークの可視化とトレース管理により、組立品質の均一化と不良率の低減をサポートしています。当社の設備は、手作業から省力化へ、さらに省人化へと移行する段階において、工程分析と効果検証の重要な役割を果たします。検査と品質向上におけるティーエイチエーの技術とノウハウは、自動化を成功へと導くための確かな基盤となります。

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