宇宙
自動車(試作)
金属3Dプリンティング 造形方式の違いによる加工精度とサイズについて
金属3Dプリンターは3Dデータさえあればボタン一つで複雑な形状の製品を作れる万能の装置というわけではありませんが、その特性を理解することで最適な使い方をすることが可能です。
元の3Dデータに忠実に精度よく造形するためには、インプットする諸条件(造形パラメータ)などの調整も重要ですが、使用する材料と造形する装置の能力には限界があります。
今回は、金属3Dプリンティングでどこまでできるのか、造形方式による違いも含めてご説明します。
造形サイズ
【最大サイズ】
当社でも採用している金属粉末を敷き詰めて溶融・凝固を繰り返して造形するパウダーベッド方式(PBF)では、最大サイズが800×400×500㎜まで造形が可能です。
パウダーベッド方式は現在主流の造形方式で、再現性が高く、寸法精度も良いことが利点ですが、造形範囲と造形時間に課題があります。
粉末を敷き詰めず(粉末床を形成せず)、金属粉末を直接噴射して溶融するデポジション方式(DED、エネルギー堆積法)であれば、最大5,791㎜ ×1,219㎜ ×1,219㎜まで造形可能な機種が、米国・Sciaky社から販売されています。
デポジション方式は造形スピードが早く、より大きなサイズの造形が可能ですが、精度と再現性、造形可能な形状に制約があるのが課題です。
【最小サイズ】
当社では最小の造形サイズを円柱形状で、
パウダーベッド・電子ビーム方式(EB-PBF)の場合はφ0.8㎜ 、
パウダーベッド・レーザー方式(LB-PBF)の場合はφ0.2㎜としています。
方形の場合は0.2㎜×0.2㎜を最小サイズとしています。
この微細形状の限界の主な要因として、レーザーのスポット径があります。現在一般的に販売されている装置のレーザーのスポット径は凡そ80㎛(0.08㎜)ですが、溶けた材料の溶融池(メルトプール)は熱が伝わることでそれ以上に広がってしまうためです。
【 薄さ 】
フィンなどの板形状のものを造形する場合の最小の薄さは、パウダーベッド・電子ビーム方式(EB-PBF)の場合は0.8㎜ (0.5㎜まで狙えますが、形状に制約あり)、パウダーベッド・レーザー方式(LB-PBF)の場合は0.3㎜(0.2㎜ まで狙えますが、形状に制約あり)としています。
【 細さ 】
線状のものを造形する場合も、前述の薄さと同等の限界値としています。 尚、金属3Dプリンターならではの複雑形状として知られるラティス(格子)形状に関しては、当社ではパウダーベッド・レーザー方式(LB-PBF)を用いて、線径0.2㎜ /ピッチ0.6㎜ を最小サイズとして実現しています。
【穴径】
穴の深さとの関係もありますが、当社の基準として造形可能な穴径はパウダーベッド・電子ビーム方式(EB-PBF)の場合はφ1㎜ 、パウダーベッド・レーザー方式(LB-PBF)の場合はφ0.2㎜ としています。
尚、複雑なパイプ形状の場合の穴径に関しては、パウダーベッド・電子ビーム方式(EB-PBF)では予熱工程で生成される仮焼結体の除去が困難になる為φ4.0㎜以上、パウダーベット・レーザ―方式(LB-PBF)ではφ0.4㎜以上としています。
早さの限界
【造形スピード】
当社で使用しているパウダーベッド方式の金属3Dプリンターのラインナップの中での最速の機種はConcept Laser社のX-Line 2000Rで、最速120㎝³/hを実現していますが、
米国・ExOne社が2019年に開発した「X1 160PRO」(バインダージェット方式、BJ)では、10,000㎝³/hの最速造形を可能にしているようです。
但し、バインダージェット方式や熱溶解積層方式(FDM)は、造形後に脱脂・焼結の工程が必要になる事には注意が必要です。
3Dプリンティングの造形速度は年々向上しているため、鋳造・ダイカストで木型や金型の製作や管理がどうしても発生してしまうことを考えると、より早く試作したい場合だけでなく、少量量産の場合でも金属3Dプリンティングで時間や総合コスト面でのメリットが出せる場面が増えています。
造形精度 公差面では、精密鋳造と同等までは実現可能
造形まま材(As built)の面粗度に関しては、パウダーベッド・電子ビーム方式(EB-PBF)ではRa25以上、パウダーベッド・レーザー方式(LB-PBF)ではRa10以上ですが、特殊ブラスト処理によって改善することが可能です。
【公差】
例えば、鋳造の公差等級で比較すると、パウダーベッド・電子ビーム方式(EB-PBF)の場合はCT8、パウダーベッド・レーザー方式(LB-PBF)場合はCT6に相当します。但し、変形/収縮予測やシミュレーションの実施、更には実績値を積み上げることによって2段階程度の精度向上は可能ですので、砂型鋳造・金型鋳造・ダイカストより寸法精度は高く、精密鋳造と同等程度まで実現は可能と考えています。
造形可能な鋼種:ステンレス、アルミから、チタンや純銅まで可能
電子ビーム方式では、純チタン/チタン合金(Ti-6Al-4V)/コバルト基合金(CoCrMo)/純銅/タングステンカーバイドに対応しており、
レーザー方式では、ステンレス鋼(SUS316L)/マルエージング鋼/ニッケル合金(IN625)/ニッケル合金(IN718)/アルミ合金(AlSi10Mg)/アルミ新合金(ANP-H4)/アルミ合金(Al-Mg-Sc)の造形が可能です。
以前は、光硬化樹脂を用いた光造形方式の3Dプリンターが主流でしたが、1992年にレーザーを用いた3Dプリンターが開発されたことで金属の造形が始まり、1997年に電子ビームを溶融熱源とする方法がスウェーデン・Arcam EBM社によって開発されたことで、チタンや純銅などの金属の造形が可能になっています。
電子の束である電子ビームは、ほとんど反射されることなく溶融する対象物(金属粉末)に吸収されて熱に変換される為、レーザー方式では困難とされていた高融点金属や、反射率の高い銅や貴金属での造形を可能にしています。
尚、当社では電子ビーム方式でも難しいとされるタングステンカーバイド材の造形実績もあります。
まとめ
・金属3Dプリンターで造形する場合、造形方式によって造形可能なサイズや精度、造形速度に違いがある。
・パウダーヘッド方式であれば、ある程度の精度や再現性の要求を満たした上で、金型レスの製造が可能なため、試作だけでなく、少量の量産まで視野に入れることが可能。
・外形品質上は、金属3Dプリンターで造形した製品は、おおよそ鋳造と同等かそれ以上の精度である。
当社では技術顧問・千葉晶彦教授(東北大学金属材料研究所)のアドバイスを受け、様々な新しい材料での造形に対応(挑戦)しています。お客様のご要望に沿った、オリジナルの材料での造形試験についてもお気軽にお問い合わせください。
どれ位の時間やコストがかかるのか?専門スタッフに相談したい場合は、
こちらへ「3Dプリンターかんたん見積シミュレーション」
https://www.jampt.jp/simulation/
3DデータをWeb上にアップするだけで概算の見積りを算出可能です。
【お問合せ先】
日本積層造形株式会社
〒985-0874 宮城県多賀城市八幡一本柳3-8
TEL:022-290-0625
FAX:022-290-0631
https://www.jampt.jp
会社名 |
日本積層造形 株式会社 (にほんせきそうぞうけい) |
エミダス会員番号 | 95395 |
---|---|---|---|
国 | 日本 | 住所 |
日本 宮城県 多賀城市八幡 |
電話番号 | 022-290-0625 | FAX番号 | 022-290-0631 |
資本金 | 9,900 万円 | 年間売上高 | |
社員数 | 28人 | 担当者 | 遊佐 俊一 |
コンテンツについて
サービスについて
NCネットワークについて