建設機械向け部品では、部品単体の強度だけでなく、組み付け時の精度や外観品質も重視されます。特にホイールローダーのエンジンフード周辺部品は、長尺形状かつ厚板仕様となるケースが多く、溶接や曲げによる反りやゆがみが発生しやすい部位です。SS400を使用した長尺フレーム部品では、加工工程全体を通じた歪み対策が品質確保のポイントとなります。

【SS400製 長尺フレーム部品の概要】
本製品は、建設機械向けホイールローダーのエンジンフードを構成するSS400製の長尺フレーム部品です。素材は鉄（SS400）で、板厚は4.5mmおよび6mmに対応しています。完成時の寸法は1200×120×60mmと、全長が長い形状が特長です。
エンジンフード内部の構造材として使用されるため、見た目の直線性だけでなく、穴ピッチ精度や組み付け時の再現性も求められる部品となっています。

【加工方法と工程構成】
本製品では、以下の加工方法を組み合わせて製作しています。

・レーザー切断
SS400の厚板材に対してレーザー切断を行い、外形形状と穴加工を行います。長尺部品であっても安定した切断精度を確保することで、後工程の曲げや溶接への影響を抑えています。

・曲げ加工
切断後の部品は曲げ加工を施し、フレーム形状を形成します。本製品は曲げ高さが短く、厚板であるため、通常の曲げ加工では鞍反りが発生しやすい条件となっています。

・ガスシールド溶接
曲げ後の部品を組み立て、ガスシールド溶接で接合します。溶接量が多くなることで、溶接歪みが発生しやすい点も本製品の課題の一つでした。

【加工上の課題となったポイント】
本長尺フレーム部品では、以下の点が加工上の大きな課題でした。

・板厚4.5mm、6mmの厚板仕様
・曲げ高さが短く、曲げ時に鞍反りが出やすい
・全長1200mmの長尺形状による歪みの発生
・穴ピッチに対する高い精度要求

これらの条件が重なることで、単純な工程では寸法精度の確保が難しい製品でした。

【反り・ゆがみを抑えるための対応】
本製品では、曲げ加工と溶接を行った後、溶接歪みと鞍反りを同時に修正する工程を取り入れています。

・曲げ加工後の形状を確認し、歪み傾向を把握
・溶接順序や条件を調整し、歪みを最小限に抑制
・溶接後に反りと鞍反りを同時に修正し、全体精度を確保

これにより、長尺部品であっても直線性と寸法精度を両立した仕上がりを実現しています。

【穴ピッチ精度への対応】
エンジンフードの構成部品では、穴ピッチのズレが組み付け不良につながるため、特に高い精度が求められます。レーザー切断による穴加工精度と、歪み修正工程を組み合わせることで、設計通りの穴位置を安定して確保しています。
長尺かつ厚板という条件下でも、穴ピッチ精度を維持できる点は、本製品の大きな特長の一つです。

【建設機械向け長尺部品に求められる加工品質】
建設機械向け部品は、振動や外力が加わる環境で使用されるため、溶接強度だけでなく、形状精度の安定性も重要です。反りやゆがみが残ったままでは、組み付け時の調整工数増加や品質トラブルの原因になります。
長尺フレーム部品においては、加工方法だけでなく、歪み修正まで含めた工程設計が品質を左右します。

【まとめ】
SS400製の長尺フレーム部品では、厚板かつ曲げ高さが短いという難条件に対し、曲げ加工と溶接後の歪み修正を組み合わせることで、反りやゆがみを抑えた加工が可能となります。ホイールローダーのエンジンフード構成部品のように、穴ピッチ精度と直線性が求められる製品において、有効な加工事例といえます。
建設機械向けの長尺・厚板部品において、安定した品質を確保するためには、材料特性を踏まえた工程設計と歪み対策が欠かせません。


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