その他
近年、化石資源に依存しない新たな素材として注目を集めるバイオプラスチック。日本では2030年までにバイオマスプラスチック200万トンの普及を目指す政府目標が掲げられ、プラスチック資源循環促進法などの支援策も整備されています。地球温暖化対策や資源循環の観点からも、バイオプラスチックは持続可能な社会に不可欠な素材として期待されています。しかし企業側では「投資は回収できるのか」「市場規模は十分か」といった懸念も根強く、導入のタイミングや方向性に迷う声が多く聞かれます。本稿では、市場動向を整理するとともに、導入の鍵となる生産技術力・製品開発力・事業支援体制についてわかりやすく解説します。
【市場動向と政策の背景】
日本政府は、環境省や経済産業省を中心に「バイオプラスチック導入ロードマップ」を策定し、2030年までにバイオマスプラスチック200万トンを導入する方針を示しました。これは使い捨てプラスチックの削減を目的としたプラスチック資源循環促進法と並行して進められています。世界的にも、欧州連合の包装廃棄物規制(PPWR)や米国・中国の環境政策が強化され、2030年以降はバイオプラスチックを含む製品比率の義務化も検討されています。世界のバイオプラスチック市場規模は2024年で約160億ドルに達し、2030年には450億ドル規模まで拡大すると予測されます。年平均成長率は約19%に上り、包装、農業、自動車、電機分野など多様な産業での応用が進んでいます。
【生産技術力:高精度成形と原料制御の革新】
バイオプラスチックの実用化には、原料特性を理解した精密な生産技術が欠かせません。主原料にはトウモロコシやサトウキビなどの植物由来成分が使われ、化石燃料と異なる熱特性を持つため、射出成形やブロー成形では温度や圧力の緻密な制御が求められます。特にポリ乳酸(PLA)は生分解性が高い反面、耐熱性や衝撃強度の向上が課題とされてきました。近年では、他樹脂とのブレンドや繊維強化、ナノセルロース複合化などにより、実用レベルの性能を実現する研究が進展しています。また、既存の石油系プラスチック生産設備をそのまま活用できるマスバランス方式も注目されています。この技術は設備投資を抑えつつ、バイオ原料比率を正確にトレーサブル管理できるため、企業の段階的導入に適しています。
【製品開発力:用途展開と評価の体制構築】
新素材の導入は、単なる素材置換ではなく、製品全体の設計思想を変える必要があります。バイオプラスチックの物性を活かすには、用途別に最適な配合・構造設計を行い、軽量化や耐久性を両立させる工夫が求められます。製品開発では、評価設備の充実も欠かせません。熱分析、機械物性、耐候性、分解特性などを国内外規格に沿って評価し、国際的な信頼性を確保することが重要です。さらに、産学官連携による共同開発が進むことで、実用化までの期間短縮とコスト削減が可能になります。欧州では、複数企業が共同でバイオマス樹脂の試験ラインを構築するケースが増えており、日本でも同様のエコシステム構築が期待されています。
【事業支援体制:導入を支える仕組みづくり】
バイオプラスチック導入の成否は、技術面だけでなく事業支援体制にも左右されます。まず重要なのは、政府や自治体による補助金・助成制度の活用です。環境技術開発支援や中小企業向けSDGs補助金を利用すれば、初期投資や開発リスクを大幅に抑えることができます。また、需要側企業との長期的な取引保証を結ぶことも有効です。これにより価格変動リスクを軽減し、安定した供給体制を維持できます。さらに、認証取得やLCA(ライフサイクルアセスメント)の支援体制を整えることで、環境価値を明確に訴求できるようになります。マーケティング面では、環境貢献を見える化したブランディング戦略が差別化の鍵となります。
【豆知識と最新動向】
・PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)は微生物発酵により生成されるプラスチックで、条件次第では自然環境下での完全分解が可能
・セルロースナノファイバーを強化材として配合することで、軽量かつ高強度な複合バイオプラの実用化が進行中
・バイオPET、バイオPEなど「ドロップイン型材料」は既存のリサイクルラインを活用でき、導入のハードルが低い
・マスバランス方式では、バイオ原料の使用量に応じたクレジットを発行し、環境価値を見える化する仕組みが採用されている
【導入企業へのステップ】
1. 経営層による戦略的判断:事業ポートフォリオにおけるバイオプラ比率を明確化
2. 原料選定と試作:用途に応じたPLA、PHA、PBSなどの比較評価を実施
3. 成形試験・性能評価:実使用環境下での耐熱・耐衝撃性を確認
4. 規格対応:国内外認証(EN規格、ASTM規格など)の取得支援体制を構築
5. 量産移行:設備改良とマスバランス管理を併用し、生産安定化を図る
6. マーケティング:環境価値の定量化と顧客への説明資料整備
【まとめ】
バイオプラスチックは、もはや試験段階の素材ではなく、世界的に普及が加速する本格的な代替資源です。日本でも2030年目標に向け、産業・政策・市場が一体となって動き始めています。導入にあたっては、高度な生産技術と信頼できる開発体制、そして的確な支援スキームが欠かせません。持続可能な未来を見据え、今こそ企業が次の一歩を踏み出す時です。
◆豊栄工業の取り組み
株式会社豊栄工業は、2007年より植物由来生分解性プラスチックの実用化に先駆けて取り組み、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業への参画を通じて、射出成形分野で世界的水準の技術を確立してきました。ポリ乳酸を中心とした独自の成形技術は、従来の樹脂加工機では困難とされた温度制御や流動特性を克服し、安定した量産体制を実現。これにより、環境配慮型製品「iiwan」をはじめとする各種応用製品が国内外で高い評価を受け、2018年にはものづくり日本大賞内閣総理大臣賞を受賞しました。また、同社は生産技術の提供だけでなく、試作開発から評価、規格認証取得、量産支援まで一貫した事業支援体制を構築。材料開発、成形解析、品質評価を融合させた総合的なサポートにより、他業種メーカーや研究機関との共同開発にも柔軟に対応しています。豊栄工業の培ったバイオプラスチック技術は、持続可能な社会を支える新素材導入の礎として、企業の脱炭素化・環境経営を力強く後押ししています。
【企業情報】
株式会社豊栄工業
所在地:〒441-1346 愛知県新城市川田字新間平1-369
TEL:0536-22-0696
FAX:0536-22-0896
HP:https://www.hoic.co.jp/
| 会社名 |
株式会社 豊栄工業 (ほうえいこうぎょう) |
エミダス会員番号 | 53062 |
|---|---|---|---|
| 国 | 日本 | 住所 |
日本 愛知県 新城市 |
| 電話番号 | 0536-22-0696 | FAX番号 | 0536-22-0896 |
| 資本金 | 1,892 万円 | 年間売上高 | 70,000 万円 |
| 社員数 | 64人 | 担当者 | 美和 敬弘 |
| 産業分類 | 工作機械 / 輸送機器 / 医療機器 | ||
| 主要取引先 |
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