【設計者必見、PEEKの驚異的な機械特性とは】
機械部品や精密機器に使われる高機能樹脂の中で、特に優れた物性を持つ素材が「PEEK（ポリエーテルエーテルケトン）」です。スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるPEEKは、過酷な使用環境でも耐えうる機械的強度と弾性率を誇り、金属代替材料としても注目されています。本記事では、PEEKの引張強度・曲げ強度・硬度・弾性率などを他の代表的エンプラと比較しながら、その高性能ぶりをデータとともに解説します。

【PEEKの基本物性、他樹脂との性能比較】
PEEKは、引張強度115MPa、曲げ強度170MPa、曲げ弾性率4.1GPa、ロックウェル硬度R126と、エンプラの中でも群を抜いた機械特性を持ちます。以下は主要な高機能樹脂との比較表です。

引張強度（MPa）／曲げ強度（MPa）／曲げ弾性率（GPa）／硬度（ロックウェル）

* PEEK：115／170／4.1／R126
* PPS：90／140／3.6／R120
* PA66：75／110／2.8／R115
* POM：65／100／2.5／R110
* PC：60／95／2.4／R115

こうしてみると、PEEKの機械的強度は他のエンプラを大きく上回ることがわかります。特に、構造材として使用する際に重要となる「剛性（弾性率）」と「硬度」の両立を実現している点が注目に値します。

【高強度だけじゃない、耐衝撃性と設計自由度も】
PEEKは高強度であるだけでなく、靱性（じんせい）にも優れています。破断時の伸びは約20％と、スーパーエンプラの中でも比較的しなやかさを持ち合わせており、突発的な衝撃荷重にも耐えられるバランス性能を備えています。また、カーボンファイバーやガラス繊維で強化すれば、引張強度や弾性率はさらに向上。例えば、30％カーボン強化PEEKでは引張強度が160MPa、曲げ弾性率が18GPaにまで達するため、高剛性を求められる精密部品への応用が広がります。

【PEEKが選ばれる理由、金属代替としての優位性】
PEEKは耐熱性（使用温度260℃）や耐薬品性にも優れており、金属と同等、あるいはそれ以上の性能を発揮する場合があります。金属から樹脂への切り替えを検討する際に、PEEKを採用することで得られる主な利点は以下の通りです。

・比重1.3～1.4で鉄の約6分の1の軽さ
・高強度・高剛性ながらも加工性が良く、複雑形状にも対応可能
・自己潤滑性により、グリス不要の摺動部品としても活躍
・射出成形が可能なため、量産性に優れる

これらの特性から、航空機部品や半導体製造装置、医療用器具、自動車の駆動系部品など、極めて厳しい要求水準の用途に多数採用されています。

【まとめ】
PEEKは、引張強度・硬度・剛性・耐熱性・加工性など、あらゆる観点で優れたバランスを備えたスーパーエンプラです。金属の代替としても十分な性能を持ち、今後ますますその用途は広がっていくことが予想されます。材料選定の際には、PEEKの高い性能を一度比較検討してみてはいかがでしょうか。技術革新が進む今、設計者の選択が製品の未来を左右します。


◆日進工業の取り組み
日進工業株式会社では、スーパーエンジニアリングプラスチックの中でも特に高性能な「PEEK（ポリエーテルエーテルケトン）」の特性を最大限に活かした製品開発を行っています。PEEKは耐熱性、機械的強度、耐薬品性に優れ、金属代替材料としても注目される素材です。弊社では1983年からPEEK成形加工に取り組み、自動車のブレーキ部品やモーターカバーといった過酷な使用環境が求められる部位での実績を重ねてきました。ミクロン単位の精度管理と独自の金型設計により、PEEKの持つ優れた特性を損なうことなく精密成形を実現。さらに、流動解析を用いたCAE技術によって成形段階での変形を予測・抑制し、高い寸法精度と品質を確保しています。軽量化、耐久性、省エネ、環境対応といった現代のモノづくりにおける課題に対して、PEEKを軸とした技術力で貢献し続けています。


※現在、日進工業株式会社ではVICTREX社製のPEEKをメインに製造しております。

▼VICTREX社ホームページ
https://www.victrex.com/ja/


【企業情報】
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