量産切削加工において、わずかな不良が累積すると、生産性・収益性に深刻な影響を与えます。不良率1%でも、月間100万個の生産では1万個の廃棄とコストが発生します。本記事では、鬼頭鉄工所が実践する「不良を作らない現場づくり」のための考え方と、具体的な削減アプローチをご紹介します。
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■1. 不良の本質は“偶発”ではなく“必然”
不良は“たまたま発生するもの”ではなく、工程内のどこかに原因が潜んでいます。多くの場合、それは次のいずれかです：
• 工具摩耗や欠損
• 加工条件のばらつき（速度、送り、深さ）
• ワーク保持の不安定性
• 段取り不備や作業ミス
• 材料ロットの違いによる加工挙動変化
鬼頭鉄工所では、こうした不良の要因を“4M（人・機械・材料・方法）”の変化点として捉え、すべての工程に「変わったら確認する」仕組みを導入しています。
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■2. 原因を“見える化”して潰す、ルールで抑える
不良削減の基本は、「再発させない」ことです。鬼頭鉄工所では、不良発生時の記録・原因分析に以下の仕組みを用いています：
• 作業者による異常報告→即ヒアリング
• 原因分析テンプレート（なぜなぜ分析＋4M区分）の活用
• 不良原因ごとの再発防止ルールの文書化
• 変化点・注意点を要領書に反映・更新し、次回の段取り者に確実に伝達
これにより、不良が“個人の反省”で終わらず、“組織の知恵”として蓄積されます。
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■3. 工具・治具の状態管理が品質を左右する
工具の摩耗やチッピング、治具の緩み・変形は、切削加工における不良の大きな原因です。
鬼頭鉄工所では以下のような状態管理ルールを徹底しています：
• 工具寿命を数値で管理し、使用回数・累積加工時間で予測交換
• 加工精度に影響するバイト位置や突き出し量を標準化
• 冶具にかかる応力・摩耗状態を定期測定・予備冶具との比較
• “良品が出ているからOK”ではなく、“良品が出る状態を維持できているか”を重視
こうした「再現性の管理」が、量産ラインの安定稼働に直結します。
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■4. 検査で見つけるのではなく、“その場で潰す”
鬼頭鉄工所では、最終検査での不良発見よりも、工程内での早期是正を重視しています。具体的には：
• 加工直後にその場測定を実施（各工程の責任区分明確化）
• 測定データをリアルタイムで共有 → NG傾向時は即停止
• 設備側での自動測定・フィードバック制御の導入（一部工程）
• 作業者判断に依存しない、デジタル基準による“合否判断”
「品質は後から保証するものではない」という考えのもと、“現場で完結する品質”を追求しています。
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■5. 設計との連携で“不良を起こさない形状”を考える
不良の中には、「その形状だからこそ発生しやすい」ものもあります。
鬼頭鉄工所では、設計段階から以下のような提案を行い、不良発生要因そのものを取り除いています：
• バリが出やすい形状 → 逃がしの追加、エッジの面取り提案
• 加工振動による面粗さ不良 → 短い突き出し設計への変更提案
• ワーク変形による寸法不良 → クランプ箇所見直し・肉厚設計提案
• 長時間加工による熱影響 → 加工工程の分割・粗加工＋仕上げ加工構成
鬼頭鉄工所は長年の経験の蓄積を生かし、“そもそも不良が出にくい製品構造”を提案しています。
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■まとめ
量産切削加工において、不良をゼロに近づけるためには、「見つけて直す」ではなく、「起こさないための設計と運用」が必要です。鬼頭鉄工所では、現場の再現性管理と工程設計段階からの改善提案を通じて、安定した品質と生産効率を両立しています。
不良は“発生するもの”ではなく、“発生させないもの”──それが量産の品質哲学です。
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