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SBTイニシアチブ(SBTi)は2026年6月、「企業ネットゼロ基準」改訂版(V2.0)を発表し、2035年以降、大企業などを対象に継続的な温室効果ガス排出に対する適格な炭素除去(OER:継続的排出の責任)を求める新基準を打ち出しました。
これにより、企業は温室効果ガスの「削減」に加え、削減しきれない排出量に対する「炭素除去コスト」の発生を見越した経営戦略が求められます。
本記事では、SBTi新基準(V2.0)の概要やScope 3を含む企業への影響、先行する海外事例(アップル等)、今から準備すべきポイントを分かりやすく解説します。
【1. SBTi新基準「企業ネットゼロ基準(V2.0)」の概要と変更点】
今回の改定における主なポイントは以下の通りです。
・適用開始時期:2035年以降(大企業等を対象に順次適用予定)
・新要件「OER(継続的排出の責任)」:ネットゼロ達成までの間に排出される温室効果ガスに対して適格な炭素除去(カーボンクレジットや除去投資)の支援を要求
・適用対象範囲:Scope 1・2(自社排出)だけでなくScope 3(サプライチェーン排出)も対象
・除去割合のスケジュール:2035年時点で継続的排出量の1%からスタートし、目標年に向けて100%まで直線的に引き上げ
これまで企業の脱炭素施策は自社やサプライチェーンでの「排出削減(リダクション)」が中心でしたが、今後は「炭素除去能力の確保」への関与が強く求められます。
【2. 企業が受ける経営・コスト面での大きな影響】
新基準の導入により、日本のSBT認証取得企業(約2,600社)やそのサプライチェーンに属する企業は、以下の課題に直面します。
・Scope 3拡大による多額の追加コスト発生
対象にScope 3が含まれるため、大企業や製造業、小売業など幅広い業種で巨額のコスト負担が発生する可能性があります。自社の削減が進まない場合、毎年多額の除去クレジット購入費用が発生します。
・サプライチェーン全体での削減要請の激化
取引先の大企業がOER適用対象となる場合、供給網における排出量削減が強烈に求められます。自社の排出量を減らすことが、将来の除去コストを抑える唯一の手段となります。
【3. 単なるクレジット調達から「炭素除去資産への投資」へ】
今回の新基準では、既存の検証済みカーボンクレジット購入だけでなく、炭素除去プロジェクト(DAC/CCSや森林再生等)への資金提供も認められます。
・先行事例:米アップルの「リストア・ファンド」
市場で高騰するクレジットを都度調達するのではなく、森林再生など除去能力を生み出す「資産」自体に投資・出資する動きが進んでいます。従来のCSR(社会的責任)から、事業継続のための「戦略投資」へ変化しています。
・技術と永続性の評価議論
大気からの直接回収(DAC)や回収・貯留(CCS)といった長期的・永続的な炭素除去技術が重視される一方、森林再生や植林による短期的除去の評価基準については、2035年の本格適用に向けて現在も議論・ガイドライン作成が進められています。
【4. 企業が今から取り組むべき3つの対応策】
制度設計の確定を待ちつつも、企業は以下の取り組みを前倒しで進めることが推奨されます。
① Scope 1〜3排出量の正確な把握と削減の加速
炭素除去コストは「残存排出量」に応じて増大するため、省エネ設備への更新や再エネ導入により、元となる排出量を極限まで減らすことが最も効果的な財務対策となります。
② サプライチェーン企業とのエンゲージメント(連携推進)
取引先や協力工場と連携してScope 3の削減を進め、サプライチェーン全体での将来コストを抑える体制を構築しましょう。
③ 省力化・脱炭素関連の補助金・助成金の活用
設備投資やDX・GX投資を行う際は、国の「省力化投資補助金」や「業務改善助成金」などを活用し、初期コストを抑えながら脱炭素・高効率化を進めましょう。
【まとめ:削減の加速と将来の炭素除去投資を見据えた準備を】
SBTi新基準による炭素除去(OER)の義務化方針は、企業の脱炭素戦略を次のステージへ引き上げます。
2035年の適用に向けて制度の最新動向を注視しつつ、自社の排出削減と省エネ・省力化投資を計画的に進めていきましょう。
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