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業界特集
![高周波誘導加熱で高精度、CO₂排出ゼロの熱処理加工](https://emidas-magazine.nc-net.com/wp-content/uploads/2024/04/792a07e5187c3154d0d6e5bfadfb7f57.jpg)
富士電子工業株式会社(大阪府八尾市)
掲載企業富士電子工業株式会社
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主要3品目
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高周波焼入れ受託加工・高周波熱処理による試作
高周波誘導加熱装置およびその部品の製造販売
トランジスタ・インバータおよびその部品の製造販売
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従業員数
130 人
富士電子工業株式会社は高周波焼入装置、誘導加熱装置の開発・製造販売と熱処理の受託加工を行っている企業だ。売上比率は設備関係が7~8割、受託加工が2~3割だが、この2つは両輪のように密接な関係にある。試作の熱処理加工からスタートし、量産が多くなると設備への営業とつながるためだ。同社が開発する誘導加熱装置の変換効率は92~96%と非常に高く、世界トップレベルを誇る。
量産しても全く同じ形状を出す精度の肝となるのは加熱後の冷却だ。こうしたノウハウの蓄積が同社の強みだという。
「マーケットが大きいところではなく、品質基準が厳格であるものなど難易度の高い領域を狙っています。安売りはしません。その代わり、お客様が困ったときのフォローアップの体制を整えています」と代表取締役社長の渡邊弘子氏は熱く語る。
技術の進歩により、これまで熱処理されていなかった部品が熱処理されるようになっている。熱処理によって強度や剛性が上がるため金属材料の使用量が減ることで軽量化が実現し、自動車の燃費向上にも寄与している。同じワークの中でも部位によって異なった特性を付与し、さらにそれを同時に行うことも可能だ。
高周波誘導加熱方式であれば、CO₂排出はなく、電源にトランジスタ・インバータを使用することにより、従来の真空管式などと比較して消費電力も削減できる。高周波誘導加熱方式による熱処理はCO₂削減に大きな貢献をしているのだ。
コロナ禍をきっかけに始まったSNS運用では、これまで付き合いのなかった業種から新たな需要を引き出せた。加熱を要する工程において、カーボンニュートラルの観点から、バーナー式から誘導加熱へ転換が起きている。導入費用は高くなるが、CO₂削減効果だけでなくランニングコストを抑えるメリットもある。熱処理だけでなく、同社の技術の活用範囲も広がっている。
熱処理は素材そのものを扱い、製品強度の担保となる重要な工程だ。他社では解決できなかった課題を持ち込まれる「最後の砦」として、日々さまざまな依頼が舞い込む。「お客様の明日の競争力を支える企業」という社是を掲げ、取引先と対等な関係性を目指す。現在は熱処理のIoT化を進め、予防予知保全のみならずトレーサビリティを支えるシステムである「FD(Fuji Denshi)-ioT」を構築している。さらに渡邊氏は「オーブン加熱と誘導加熱、それぞれのいいとこ取りをしたハイブリッド加熱」を目指している。熱処理の時間が短くなれば、作業員の負担も減る。人材不足が懸念されるこれからの日本の製造業では、働き方改革が急務だ。IoTシステムと連動しながら、装置で夜間に無人での業務対応が可能な体制が作れれば製造業が大きく変革するかもしれない。熱処理の技術革新はまだまだ続きそうだ。
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