第9回 流動資産担保保証制度-資金調達

金融機関から融資を受ける際、通常は不動産を担保に融資を受けます。この制度は、不動産担保ではなく売掛債権や棚卸資産を担保として融資を受けることができ、不動産担保に依存しない、中小企業の資金調達の手法となります。

1. 対象者

中小企業者(個人又は法人・組合等で事業を営んでいる方)で、一部の業種(農業、林業、漁業、金融・保険業等)を除きほとんどの方が対象となります。

都道府県ごとに、対象とならない業種が定められているので、各都道府県の信用保証協会のホームページをご参照下さい。なお、下記アドレスから各都道府県の信用保証協会ホームページにアクセスできます。
http://www.zenshinhoren.or.jp/others/nearest.htm

2. 支援内容

中小企業者が保有している売掛債権及び棚卸資産を担保として金融機関が融資を行う際、信用保証協会が債務保証を行う制度です。売掛債権とは、売掛金債権、割賦販売代金債権、運送料債権、診療報酬債権、工事請負代金債権等が対象となります。

(ア) 保証限度額
2億円
(保証割合が80%のため、金融機関からの借入限度額は2億5千万円となります。)

(イ) 保証期間
根保証方式:1年間
個別保証方式:1年以内

(ウ) 保証人
申込人が法人の場合には、代表者が保証人となる必要があります。

(エ) 保証料率
借入極度額(借入金額)に対し、年率0.68%

(オ) 担保条件
売掛債権及び棚卸資産のみを担保とします。

3. 利用方法

(ア) 保証申込方法
金融機関を通じて、申し込む必要があります。申込みの際には、
 具体的な取引内容が確認できる資料
 売掛債権や棚卸資産の売却代金が入金される口座の届出
が必要となります。
なお、入金される口座が本制度に基づく融資を受ける金融機関以外の金融機関の口座である場合(例えば、A銀行から融資を受けるが、売掛金の入金口座がB銀行にある場合)、1ヶ月に1回以上、預金明細を提出する必要があります。

(イ) 借入金額
売掛債権は、売掛先が倒産するリスク等があるため、実際の売掛債権の額面そのままの金額で融資を受けられるわけではなく、一定の掛け目がかかります。また、融資期間中は、3ヶ月に1回以上、売掛債権の金額及び棚卸資産の数量等を金融機関に報告する必要があります。

(ウ) 返済方法
個別保証方式の場合、融資の返済期日は、対象となった売掛債権の入金予定日に設定し、期日一括返済が基本となります。

(エ) その他留意事項
 債権譲渡禁止特約の付いた売掛債権は、本制度の対象となりません。売掛先から解除承諾書の提出を受ける必要があります。
 機械設備や車両運搬具等の固定資産は担保の対象となりません。
 本制度を活用するためには、売掛先である取引先から、適切な理解と協力を得ることが重要です。

4. 問い合わせ先

(社)全国信用保証協会連合会 電話:03-6823-1200
各都道府県等の信用保証協会  http://www.zenshinhoren.or.jp/others/nearest.htm

執筆者紹介
大井 宏明(おおいひろあき)

株式会社ルーキー
代表取締役社長

公認会計士。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年から監査法人トーマツにてベンチャー企業の株式公開支援業務、法定監査業務、その他各種コンサルティング業務に従事。2005年末に監査法人トーマツ退社後、2006年初から上場準備企業の取締役CFOに就任し、上場準備業務の統括責任者となる。2008年株式会社ルーキーを設立、代表取締役社長に就任。経営戦略立案や社内体制整備等の各種コンサルティング業務を実施している。
株式会社ルーキーホームページ:http://rookie-japan.com

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