第8回 信用保証協会による社債保証制度-資金調達

第7回の信用保証制度でご説明したとおり、中小企業は、金融機関から融資を受ける際、事業に必要となる資金が十分に調達できない等、様々な障害があります。このような状況を踏まえ、信用保証制度だけでなく、中小企業への直接金融の手法として社債(私募債)を発行し、中小企業の資金調達を支援する取り組みがあります。

1. 対象者

(ア) 純資産が5,000万円以上3億円未満の中小企業
 自己資本比率20%以上又は純資産倍率2倍以上
かつ
 使用総資本事業利益率10%以上又はインタレスト・カバレッジ・レーシオ2.0倍以上
<用語の説明>
① 自己資本比率=自己資本÷総資産
② 自己資本
貸借対照表上の純資産から新株予約権を控除した金額
③ 総資産
貸借対照表の資産合計(負債純資産合計)
④ 純資産倍率=純資産÷資本金
⑤ 使用総資本事業利益率=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷総資産
⑥ インタレスト・カバレッジ・レーシオ
=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷(支払利息+割引料)

(イ) 純資産が3億円以上5億円未満の中小企業
 自己資本比率20%以上又は純資産倍率1.5倍以上
かつ
 使用総資本事業利益率10%以上又はインタレスト・カバレッジ・レーシオ1.5倍以上

(ウ) 純資産が5億円以上の中小企業
 自己資本比率15%以上又は純資産倍率1.5倍以上
かつ
 使用総資本事業利益率5%以上又はインタレスト・カバレッジ・レーシオ1.0倍以上

2. 具体的な計算方法

対象者の判定を具体的な数字で説明します。

貸借対照表(単位:百万円)
流動資産100流動負債100
  固定負債150
固定資産 負債合計250
 有形固定資産200資本金100
 無形固定資産10資本剰余金20
 投資その他の資産90利益剰余金30
固定資産合計300純資産合計150
資産合計400負債純資産合計400
損益計算書(単位:百万円)
売上高500
売上原価280
売上純利益220
販管費180
営業利益40
受取利息20
受取配当金10
営業外収益合計30
支払利息40
支払割引料10
営業外費用合計50
経常利益20
特別利益10
特別損失20
税金等調整前当期純利益10
法人税・住民税・事業税4
当期純利益6

まず、純資産合計が150百万円なので、(ア)に該当します。
① 自己資本比率 =自己資本÷総資産
=150÷400=37.5%>20%
② 純資産倍率 =純資産÷資本金
=150÷100=1.5倍<2.0倍
③ 使用総資本事業利益率 =(営業利益+受取利息・受取配当金)÷総資産
=(40+20+10)÷400=17.5%>10%
④ インタレスト・カバレッジ・レシオ
=(営業利益+受取利息・受取配当金)÷(支払利息+割引料)
=(40+20+10)÷(40+10)=1.4倍<2.0倍
以上より、①及び③を満たしているので、対象者となります。

3. 支援内容

上記対象となる中小企業者が発行する私募債について、信用保証協会が債務保証を実施します。

(ア) 保証限度額
4億5千万円
(保証割合が80%のため、発行価額の限度額は5億6千万円となります。)
ただし、セーフティネット保証を除く普通保証、無担保保証と合計での限度額が5億円となっております。

(イ) 保証料率
対象となる中小企業者の財務内容その他の経営状況を勘案して、各都道府県の信用保証協会が保証料率を決定します。社債総額に対し、おおむね0.45%から1.90%の範囲となっております。
なお、「中小企業の会計に関する指針」に沿った財務諸表(いわゆる決算書)を作成している場合や担保がある場合には、0.1%程度の割引があります。

(ウ) 保証人
不要です。

(エ) 担保条件
金融機関、信用保証協会の約定によりますが、原則として保証金額が2億円を超える場合は担保が必要となります。

(オ) 償還期間
金融機関、信用保証協会の約定によります。

4. 利用方法

当該制度申込時に金融機関又は信用保証協会に必要資料を提出することとなっております。必要書類に関しては、金融機関又は信用保証協会に問い合わせる必要があります。

5. 問い合わせ先

(社)全国信用保証協会連合会 電話:03-6823-1200
各都道府県等の信用保証協会  http://www.zenshinhoren.or.jp/others/nearest.htm

執筆者紹介
大井 宏明(おおいひろあき)

株式会社ルーキー
代表取締役社長

公認会計士。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年から監査法人トーマツにてベンチャー企業の株式公開支援業務、法定監査業務、その他各種コンサルティング業務に従事。2005年末に監査法人トーマツ退社後、2006年初から上場準備企業の取締役CFOに就任し、上場準備業務の統括責任者となる。2008年株式会社ルーキーを設立、代表取締役社長に就任。経営戦略立案や社内体制整備等の各種コンサルティング業務を実施している。
株式会社ルーキーホームページ:http://rookie-japan.com

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