第5回 個人保証・第三者保証不要制度-資金調達

中小企業の経営者は、基本的に会社の借入に際し、個人保証(又は第三者保証)を差し入れています。融資をする金融機関の立場では、「中小企業の経営者が借入目的に沿って融資資金を使用せず、浪費しないために個人保証を求める」という考え方は非常に合理的です。ただし、融資を受け入れる中小企業の経営者の立場では、「会社の経営が傾くこと=経営者の人生そのものが厳しくなること」となり、本来融資を受けることで成功する事業を積極的に展開することに躊躇することが容易に想定できます。これでは、国にとって非常に有益な新規事業が育ちにくい環境にあるといえます。

そこで、中小企業の経営者のリスク軽減を図るため、中小企業の経営者の個人保証が不要な融資、又は第三者の保証が不要な融資が受けられる制度が存在します。

1. 経営者本人の個人保証を不要とする制度

(ア) 対象者
① 経営者が信頼できると認められる。
② 経営内容に応じて、財務制限条項等の一定の経営面・財務面の約束を締結する。
の要件を満たす中小企業。(金融機関の審査がありますので、全ての中小企業がこの制度を利用できるとは限りません。)
(注)財務制限条項
「経常利益の黒字維持」や「純資産を前期比80%以上維持」といった金融機関との約束。財務制限条項を守らない場合、融資残額の一括返済等のペナルティが生じます。

(イ) 支援内容
① 保証人免除特例
a) 個人保証を免除
b) 貸付限度額
制度ごとに定められた限度額(セーフティネット貸付制度で融資を受けた場合、その全額)
c) 貸付利率
基準金利等の制度ごとに定められた利率+0.3%
d) 貸付期間
制度ごとに定められた期間
② 保証人猶予特例
a) 個人保証を猶予
定期的な業績報告等、一定の約束を守ることを条件に個人保証を免除。約束を守れない場合、個人保証が発生。
b) 貸付限度額
制度ごとに定められた限度額(セーフティネット貸付制度で融資を受けた場合、その全額)
c) 貸付利率
基準金利等の制度ごとに定められた利率+0.1%
d) 貸付期間
制度ごとに定められた期間

(イ) 支援内容
① 保証人免除特例
a) 個人保証を免除
b) 貸付限度額
制度ごとに定められた限度額(セーフティネット貸付制度で融資を受けた場合、その全額)
c) 貸付利率
基準金利等の制度ごとに定められた利率+0.3%
d) 貸付期間
制度ごとに定められた期間
② 保証人猶予特例
a) 個人保証を猶予
定期的な業績報告等、一定の約束を守ることを条件に個人保証を免除。約束を守れない場合、個人保証が発生。
b) 貸付限度額
制度ごとに定められた限度額(セーフティネット貸付制度で融資を受けた場合、その全額)
c) 貸付利率
基準金利等の制度ごとに定められた利率+0.1%
d) 貸付期間
制度ごとに定められた期間

(ウ) 取扱金融機関
日本政策金融公庫(中小企業事業)

(エ) 問い合わせ先
株式会社日本政策金融公庫(日本公庫)の全国各支店
http://www.c.jfc.go.jp/jpn/bussiness/nw/index.html
東京相談センター  電話:03-3270-1260
名古屋相談センター  電話:052-551-5188
大阪相談センター 電話:06-6314-7627
福岡相談センター 電話:092-781-2396

2. 第三者保証人等を不要とする制度

上記「1.経営者本人の個人保証を不要とする制度」が法人向けの制度であるのに対し、この制度は個人事業者に対して有益な制度です。法人が利用する場合には代表者の個人保証が必要となりますので、法人の場合は上記1の制度を利用した方が良いでしょう。

(ア) 対象者
① 税務申告を2期以上行っている。
② 原則として、所得税等を完納している。
の要件を満たす法人又は個人。(金融機関の審査がありますので、全ての方がこの制度を利用できるとは限りません。)

(イ) 支援内容
① 貸付限度額
4,800万円
② 貸付期間
a) 運転資金5年以内(特に必要な場合7年以内)(うち据置期間6ヶ月以内)
b) 設備資金10年以内(うち据置期間2年以内)
(注)セーフティネット貸付制度を利用した場合、運転資金の貸付期間は8年以内となります。
③ 貸付利率
基準利率+0.65%
基準利率は、
http://www.k.jfc.go.jp/riritsu/riritsu_1ran_m.html
をご参照下さい。
④ 担保 
不要
⑤ 保証条件
法人 代表者の個人保証
個人 不要

(ウ) 取扱金融機関
日本政策金融公庫(国民生活事業)

(エ) 問い合わせ先
株式会社日本政策金融公庫(日本公庫)の全国各店舗
http://www.jfc.go.jp/branch/index.html
事業資金相談専用ダイヤル 電話:0570-054649(ナビダイヤル)
ナビダイヤルをご利用できない場合
こくきんビジネスサポートプラザ東京 電話:03-3345-4649
こくきんビジネスサポートプラザ名古屋 電話:052-563-4649
こくきんビジネスサポートプラザ大阪 電話:06-6315-4649



執筆者紹介
大井 宏明(おおいひろあき)

株式会社ルーキー
代表取締役社長

公認会計士。慶應義塾大学経済学部卒業。1999年から監査法人トーマツにてベンチャー企業の株式公開支援業務、法定監査業務、その他各種コンサルティング業務に従事。2005年末に監査法人トーマツ退社後、2006年初から上場準備企業の取締役CFOに就任し、上場準備業務の統括責任者となる。2008年株式会社ルーキーを設立、代表取締役社長に就任。経営戦略立案や社内体制整備等の各種コンサルティング業務を実施している。
株式会社ルーキーホームページ:http://rookie-japan.com

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