3-5 その他の問題点

(1) エンボス

半抜きと呼ばれるエンボスは通常ダイとパンチを同寸で製作される。

抜き概念での説明により板厚のほぼ65%で抜きが完了するため被加工材厚の半分以上の高さを要する場合パンチ刃先にRを付け破断面を防ぐ必要がある。

半抜きエンボスの最大高さは板厚の70%が限界。

板厚分程度の高さを要する場合は、ダイの寸法を所定としパンチ寸法をそれより大きく設定する。

その際パンチの入る深さを最大板厚の70%とし径は凹部空間と凸部の体積が一致する寸法を設定する。

(2) バ-リング

下穴を前工程(ステージ)で加工し突き上げる方法と下穴と突き上げを同時に行う方法がある。

下穴と突き上げを同時に行う場合下穴抜きカスの処理が問題となり結果として製品が打痕傷不良となることが多い。

単発作業のように作業者が存在し確認する必要がある。順送または工程に余裕がある場合は下穴と突き上げは別工程(ステージ)が好ましい。

バーリング凸部の外径と内径については、肉厚で50%~70%で設定する。

タップ用の場合は肉厚の厚い70%近くで設定し、外径をガイド等で使用し精度を要する場合は50%近くで設定する。

(3) 補強ビ-ト

薄板の材質、板厚をアップさせずに強度を増加させるため補強用のビードを設けることがある。

曲げと同様に近くの穴変形と製品平面度の変化が発生することがあるので注意。

高いビードの場合ビード周りの凸側に曲げと同様のストライキングを設けることにより安定することがある。

(4) バンピング

被加工材は種々加工により平面度が工程(ステージ)を追うごとに悪化する。

これを矯正することを目的としてバンピングを行うことがある。

バンピングは星打ちまたは七子目ナラシと呼ばれることもある。

一般的にバンピングは裏表両面加工とする。

製品の面に接触してスライドする部品がある場合バンピングにより動作不具合となるためその部分は打たないようにする。

バンピングの目(ピッチ)は細かい方が効果は大きいが金型コスト高及び穴間距離の変化等の問題も発生する。

(5) 曲げ側面内側のエンボスまたはバ-リング

曲がった側面の内側に凸となるエンボスまたはバーリングがある場合、曲げパンチを刃先まで逃がすとその曲げの根本はボケる。

結果として、曲げ高さ方向の寸法変化となる。

ボケが不具合または曲げ高さの精度を要する場合、曲げ部に捨て穴を設ける、または曲げパンチをカムによりスラスト方向に移動させる。

カム使用は金型コスト、品質、生産性で不利となる場合が多い。

設計とメーカーの連携

プレス加工における問題点はこれ以外にも多くあります。
上記の問題点は、一般的な通常技術で問題ない範囲を示しており現実にはもっと厳しい条件で作業は行われています。
製品機能として、可能であるならば上記条件で製品設計が行われればコスト・品質で有利になります。
製品機能として、条件を満足出来ない場合には部品メーカーに努力を求めるか、別な方法を設計・メーカーが協力して模索することも重要ではないでしょうか。
但し技術進歩は、困難な条件を乗り越え現実のものとしなければならないことも重要です。

職人

とかく技術者(職人)は失敗はしたくないもの。でも技術で他人には負けたくない。
出来ないと言って出来てしまうのも技術者の癖。
困難、普通では出来ないと言いながら密かに挑戦したくなる。
期待されている、頼られているとなると張り切ってしまい予想以上の結果を出す。
そんな心理をうまく利用するのも技術では・・・・

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