第6回 岡田鈑金株式会社

( 初出:日刊工業新聞社「プレス技術」第36巻 第9号(1998年8月号))

執筆者 内原康雄

デジタルファクトリー最前線も6回目を迎える。
これまで掲載各企業を取材して感じるのは、CAD/CAMが製造のキーワードになりつつあるということである。現在、製造業が迎えている状況の中でいかにコンピューターをツールとして利用するか?これはその企業の中に優秀なSE的存在のスタッフがいるかによる場合が多い。そして、たいがいは2代目等の跡継ぎの力によるものが多い。
今回は社長のダイナミック経営の基に常に先進的なデジタル化への投資をする(株)岡田鈑金を紹介する。
(株)岡田鈑金は主として50~500個の少量生産に強みを持つ部品製造メーカーである。
本社蒲田工場、茨城工場の2工場を拠点とし、製造範囲は娯楽部品筐体から、精密機器筐体部品、計測器筐体、広告部品等など多品種にわたる。
NCマシンの歴史は古く昭和48年にはトルンプ社(西独)製のパンチングマシンを導入している。そして現社長、増田道造氏によって早くから自動プロによるNC化が行われてきた。

1. 「FUSION」を軸としたCAD/CAMシステム

岡田鈑金のネットワークシステム構成は図1のとおりである。

インターネットで転送されてきたデータを「FUSION」(中本鉄工)で取り込み、板金展開をする。展開されたCADデータはアマダ、村田のタレットパンチャーのラインへとNCデータとして、出力される。アマダ、村田のタレットパンチャーと材料保管システム、さらには金型まで自動化の流れで統括している。これらをすべて取りまとめているのが「FUSION」である。このシステムについて増田社長は「自動化できる部分はすべて自動化の流れに変えました。あとは岡田鈑金の職人技と経験がモノをいいます」と語る。
通常、自動化とはいえば量産工場についての場合が多い。しかし、岡田鈑金は50~500個の部品に強みを持つ部品メーカーである。この自動化のラインを構築したのは見事と言うほかない。
現状のネットワークの中で目に付くのがテレビ電話による会議システムである。
岡田鈑金のネットワークの中核は蒲田工場と茨城工場のネットワークである。これを人為的に結び付ける目的でテレビ電話を導入した。増田社長はテレビ電話について「製造で必要なのはコミュニケーションです。テレビ電話を導入したのは、2つの拠点のコミュニケーションを高めるためです。例えば、メッキの付き具合、溶接の付き具合等の不良品の度合い、また類似品の区別など製品を写しながら連絡にも利用しています」
取材をしている最中にもテレビ電話を使い、搬送品の確認をしていた。
まさに新しいネットワークの確立に利用していると言える。

2.O-BAN生産システム

増田社長の構想している生産システムは上記のとおりCAD/CAM中心である。
このシステムは今、コンピュータテクノロジーと職人芸の融合によって、大きな生産管理システムの流れになりつつある。岡田鈑金では数年前からCI(Corporation identity)を取り入れ名称を「O-BAN(オーバン)」としている。
このO-BAN生産システムは図面=CAD/CAM-NC板金加工-溶接、組立-検査-塗装、メッキの流れをシステム化したものである。

「私ども岡田鈑金の生産システムは常にお客様と私どもの職人を繋ぐヒューマンネットワークです。コンピュータ化は大切だけども、重要なのは人間がどこに介在するかということです」と語る。
その理念の中で昨年来、アマダのタレットパンチャー及び自動材料倉庫等、積極的なNC機械への投資をしている。

3.CAD/CAMシステムの今後の展開

得意先のCAD化が推し進められる中で、岡田鈑金では今後の展開の一つとしてインターネットを核とした受注システムの確立を目指している。そのための準備段階として、3次元CAD/CAMのオペレーターを2名養成した。この構想によれば得意先の3次元CADによって描かれた図面を岡田鈑金で部品展開し「FUSION」によってNCタレットパンチャーにデータを送り出すようになる。
これにより 得意先と岡田鈑金の受注関係はより強固なものになる。
さらに、これを武器として、新規得意先の受注への足がかりとするのが増田社長の構想である。現状では得意先のCAD化が遅れている所もあるが、自動車、弱電のメーカーを見てもCAD化は猛烈な勢いで進んでいる。その受け皿を作ろう、というのが岡田鈑金の今後の展開であろう。
後継者難が叫ばれて久しい中小製造業の中で、増田社長の子息、武雄氏も2年間の修行生活を終えてこの4月に入社した。NC工作機械のオペレーターを経験し、コンピューターの知識を身に付けての入社である。そういった意味では、このネットワークを引き継ぐ準備も着々と進んでいる。
今後の岡田鈑金の展開におおいに期待したい。

岡田板金株式会社

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