第4回 宮澤工業株式会社

( 初出:日刊工業新聞社「プレス技術」第36巻 第7号(1998年6月号))

執筆者 内原康雄

専務取締役・宮澤和弘氏

これまでデジタルファクトリー最前線は、CAD/CAMシステムを中心としたFA化の事例を紹介してきた。今回は視点を変えて、板金用生産管理システムの事例を中心に紹介する
宮澤工業株式会社は東京の小平に板金中心の本社工場を置き、群馬県榛名町にプレス工場を展開している
宮澤和弘専務は「10年ほど前までは自動車の下請け工場でした。しかし、度重なるコストダウンの要請に対して、付加価値のある製造への移行を目指して板金展開を目指しました」と語る。
最初の板金用設備を導入したのは、昭和63年のレーザー加工機である。以来、本社工場は板金向け設備、榛名工場は従来からのプレス設備という流れを決めて多数の得意先からの受注を計っている。
「昭和63年時点、自動車の依存率80%でしたが、現在では自動車15%、物流関係15%、建築30%、建設関係15%と幅広い業種からの受注を心がけています。板金とプレスの売上比率は50%づつです」と宮澤専務。

幅広い得意先からの受注と、板金とプレスという2本柱の生産体制を実現しているのは、中小製造業において希有な例ではないだろうか?
宮澤工業全体の業務としては金属プレス加工、金属プレス金型製作をはじめNCによる精密板金加工、試作加工、レーザー加工、熱処理、塗装、組立、等をこなしている。

1. NC工作機械による精密板金加工

今回は板金中心の本社工場の生産管理システムレポートである。
宮澤工業では方針として一社依存率を低くし、多数の顧客から専門的な製品を受け入れる体制を確立している。
宮澤専務は「プレス加工は量産加工でしたから、売上に対する材料比率が大きく、付加価値は決して高くありません。それに対して試作板金は材料費も少なく、付加価値も大きかった。そこで昭和63年にレーザー加工機を導入して本格的に板金加工に参入しました」と語る。
現在ではレーザー、タレットパンチャー複合加工機を中心に下記のような生産設備体制となっている。さらにCAD/CAMシステムとNC工作機械のDNC化による設計と生産システムの直結したシステムが構築されている。

2. 多品種少量生産向け生産管理システム

受注入力作業は図1のように行われている。ここで受注されたデータは工程別に分解される。受注から生産計画が出され作業指示書がそれぞれ行き渡る。
CAD/CAMシステムとの連携はネットワーク構成図2のとおりである。
アマダAP40で設計されたCADデータはDFX(Date Exchange File)かNC加工データとして変換される。変換されたデータは加工予定表にあわせて生産管理システムコンピュータ端末のAに登録される。そして生産計画の予定表からいつ設計するのか、いつ加工するのかが割り出される。さらに加工進捗状況の一覧表が出され、納期に遅れそうなものはどれかいち早く判断できる。

現場での進捗状況を把握するのに使用しているのが、図3のバーコードシステムである。
現場での加工終了、在庫等はこのバーコードシステムで行う。これにより現場での状況が明確に生産管理のコンピュータに反映される。
導入前と導入後における工数比較を提示したのが図4である。

宮澤専務は「このシステムですべてがうまくいっているわけではありません。しかし、導入前と導入後では管理の手間が大幅に減りました。生産管理システムの第1号機は平成4年に約1800万円をかけて導入しました。さらに平成 8年に約700万円をかけて現在の形にしました。来年度は榛名工場を含めて全社的な統合生産管理システムをハードウェア含めて一新する予定です」と語る。
今後の工場間のネットワークがどういった形で具現化するのかが大いに楽しみな所である。

3. ネットワークの構築、インターネット利用

宮澤専務はネットワークの可能性について次のように語る。
「インターネットは製造にとって革新的なツールです。まず当社のインターネットの利用方法としては、今まで紙やFD(フロッピーディスク)等で行っていた図面やNCデータの交換をインターネットのメールを使って行う実験をはじめました。これによって打合わせや配達の時間を大幅に短縮できます。たとえば、本社に依頼された図面を榛名工場に配信します。その回答もCADデータ同士で行うため寸法の見間違えがありません。そして必要とあればすぐにでも試作やレーザー加工機の加工データに展開できます。また生産管理、工程管理等もリアルタイムで集計し、今日の生産高を本社で集計できます。設計等に必要なカタログや仕様等をメーカーのホームページから引き出すこともできます。今後のネットワーク利用の展開としては当社の協力会社さんや当社の各工場をネットワークで結びより早い納期対応に備えていくつもりです」
社内で構築した製造技術をより早くネットワーク化に載せようというのも常にコンピューターを利用技術として考える宮澤専務の視点があるからであろう。
ホームページについて「当社でホームページを立ち上げました。Yahoo(世界最大のインターネット検索サービス会社)への登録もしました。今後はインターネットを活用し客先や外注先の開拓を積極的に行っていきたいと思います。インターネットはうまく利用できれば情報を集めたり発信したりする社員が数人増えたのと同じくらい価値がある物だと考えているので、これからもいろいろな分野に応用していきたい」と語る。
設計からネットワークにコンピューターを活用している宮澤工業株式会社の課題は加工ネットワークをどう構築していくかにある。

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